8月30日付で、金融庁より「2024 事務年度金融行政方針」が発表されました。
金融庁は毎年この時期に新たな事務年度(今年7月から来年6月)の行政方針を公表、重点施策となる取り組みを示しています*2。
「実績と作業計画」については、このブログ記事執筆時点(9月2日)では掲載されておらず「後日公表を予定」となっていますが、
の3点は公開されています。
私自身もまだざっと目を通しただけではありますが、サステナビリティ関連で気づいた点を取り急ぎ3点、お知らせいたします。
サステナビリティ開示に関する内容が、「2.サステナブルファイナンスの推進」の項目(1)に置かれている点は2023と変わりはないのですが、タイトルが少し変わりました。
2024のタイトルは、
企業のサステナビリティ開示の充実と信頼性の確保
となっています。
(2023のタイトルは「(1)企業のサステナビリティ開示の充実」でした)
これは、「サステナビリティ情報に対する保証のあり方等について検討を進め、結論を取りまとめる」ことが今年度の事務方針のなかに含まれているためです。
有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示については、金融審議会において、東証プライム市場上場会社の全部又は一部を対象に、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB33)のサステナビリティ開示基準と機能的に同等な国内基準の適用やサステナビリティ情報に対する保証のあり方等について検討を進め、結論を取りまとめる。
なお、2023の表現は「~サステナビリティ情報の信頼性確保に向けた保証のあり方についても、国際的な議論を踏まえ、検討を進めていく」でした。
ISSBは2024年4月、今後2年間で主に取り組むテーマ(「生物多様性・生態系および生態系サービス(BEES)」と「人的資本」)を発表しました。
この中で、「金融庁として」積極的に基準開発に貢献していくと述べているのは「人的資本」です。
サステナビリティ開示に関し、ISSBにおいて新たにリサーチプロジェクトが始まる人的資本の分野につき、投資家のニーズを充足した基準開発に貢献すべく、国内の関係者と連携しながら、国際的な議論への参画や意見発信等を進める。
(太線部分は筆者によるもの)
個人的には、2023にはなかった表現として「投資家のニーズを充足した基準開発に貢献すべく」が記載されている点が気になります。
ISSBとしては、(以前のブログでも書きましたように)ESRSとの相互運用性(Interoperability)を強く意識して「人的資本」リサーチプロジェクトを進めているようですが、「日本の人的資本開示は現状、経済や経営の側面に偏りがち」なところがありますので…
日本の金融庁としてはどのような意見を発信し、それがISSBにどのように反映されていくのか、引き続き注意深く見守っていきたいと思います。
2024ではESG評価・データ提供機関に関して新たに段落を設け、次のような文言が記載されていました。
ESG評価・データ提供機関がデータ等の品質・透明性の向上の鍵となるが、「ESG 評価・データ提供機関に係る行動規範」(2022年12月公表)に賛同したESG評価・データ提供機関における態勢整備の状況等について実態把握を行い、さらなる対応の要否等について検討を行う。
(太線部分は筆者によるもの)
今年8月、「ESG格付け規制、英国が来年法律提案へ」との報道があったことをご記憶の方もおられると存じます。これに近い動きが出てくるのか、非常に気になるところです。こちらも気を付けてウォッチしていきたいと思います。
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他にもいくつか気になる点はあるのですが、また日を改めてお伝えしたいと存じます。
本日もお読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 「〇事務年度」は、○年7月から翌年の6月末までの期間を示します(出典:国税庁ホームページ)。
*2 出典:ロイター「 大手金融グループの監督を強化、金融庁が新行政方針」(2024年8月30日)
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。