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HINTサステナ情報のヒント

ISSBの「人的資本」リサーチプロジェクトは
CSRD/ESRSを強く意識?

サステナ開示をめぐる動向 / 人的資本開示

8月8日付でリリースされた、IFRSの最新のウェブキャスト「Overview of the ISSB’s two-year work plan」を聞きました*1

ISSBが「次なるサステナ基準」の準備の一環として、今後進めていく「人的資本リサーチプロジェクト」について、追加情報や進捗の話などがあればと思って聞いていたのですが、

その中で、ひとつ発見がありましたのでご報告いたします。

 

人的資本リサーチプロジェクトに関する発言内容まとめ

  • 企業内で働く人だけでなく、企業のバリューチェーンで働く人々も対象とする(human capital doesn’t just refer to the people who make a company’s own workforce, but also workers in the company’s value chain)

 

  • 以下のような領域も含む:
    –  労働とウェルビーイング(work and well-being)
    –  人材投資(workforce investment)
    –  代替労働力 (the alternative workforce)
    –  バリューチェーンにおける労働条件(labour conditions in the value chain )

 

  • 人権に関する内容が一部含まれる可能性もある

(該当部分の原文と試訳はこちら↓)

We believe that some aspects of sustainability-related risks and opportunities that are relevant to human rights are likely to be addressed as part of our research project on human capital.

(人権に関わるサステナビリティ関連リスクや機会の一部が、人材に関する研究プロジェクトの一環として取り上げられる可能性が高いと考えています)

 

「人権に関する内容の一部」の具体例として挙げられた内容が…

今回ご報告したいのは、このウェビナーのなかで、上述の「人権に関する内容」の具体例を挙げた部分を聞いて気づいたことです。

該当部分の原文と試訳を記載しましたので、まずはご覧ください:

You know those related risks and opportunities that are part of the entity’s own workforce and with workers in the entity’s value chain, which you talked about, those could reasonably be expected to affect the entity’s prospects and we think could be encompassed.

自社の従業員バリューチェーン内の労働者に関連するリスクと機会は、企業の将来性に影響を与えると合理的に予想されるため、これらが(人的資本リサーチプロジェクトに)包含される可能性があると考えています)

 

In addition, we observed that many human rights-related risks and opportunities associated with affected communities and consumers and end users, tend to be industry-specific in nature, and therefore we expect that they might be addressed through our work to enhance the SASB Standards.
(さらに、影響を受けるコミュニティ消費者およびエンドユーザーに関連する多くの人権リスクや機会は、業界特有の性質を持つ傾向があるため、SASB基準の強化を通じて対応されることを期待しています)

 

・・・お気づきになりましたでしょうか?

 

IFRSがここで挙げた

  • 自社の従業員(Own Workforce)
  • バリューチェーン内の労働者(Workers in the value chain)
  • 影響を受けるコミュニティ(Affected communities)
  • 消費者およびエンドユーザー(Consumers and End-users)

は、それぞれ、ESRSのE1~E4に該当しているのです。(言葉の使い方まで全く同じです)

 

改めて、ISSB StandardはESRSとの相互運用性(Interoperability)を強く意識しているのだなと感じました。

 

実は私、まだ2024年5月にリリースされたウェブキャスト(ESRS-ISSB標準相互運用性ガイダンスの概要を説明しているもの)を聞けていなかったので、この機会にちゃんと聞いておこうと思った次第です。

こちらも何か発見があれば、またご報告します。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

 


脚注

*1:ウェブキャストは、上記のIFRSページのほかに、YouTubeでも視聴可能です。
Webcast: Overview of the ISSB’s two-year work plan

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