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HINTサステナ情報のヒント

サステナビリティ開示の一環としての税務開示④
税の公平性とは何か

サステナ開示をめぐる動向

「企業には今、税務開示としてどのような内容が求められているのか」のヒントを探るシリーズの第4回目です。

 

このシリーズの1回目で私は、企業様の税務開示においては

 プランニング(税の適正化を通じた利益創出)コンプライアンスのバランス

をどうとるかが難しいのでは…というお話をしました。

 

今回採り上げる資料は、この点に対してある程度の指針が示されていると思いますので、ぜひご紹介させてください。

 

国際合意を踏まえ、投資家の行動変容を促したペーパー

今回ご紹介するPRIのディスカッションペーパー「What is tax fairness and what does it mean for investors?」は、2021年12月に発表されたものです。

2021年12月といえば、2か月前にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」での国際合意がなされたばかり。(注:国際合意の内容について、詳しくは第2回をご参照ください)

つまりこのペーパーは、デジタル課税やグローバル・ミニマム課税などが導入されるという環境を踏まえ、PRIが機関投資家に「税の公平性」に沿った行動を促すものとしての意味を持っていたことがわかります。

 

税の「公平性」こそが最上位概念であると整理

本ペーパーの最大の読みどころは、この図だと思います。

 

(出典:PRI「What is tax fairness and what does it mean for investors?」p13)

 

Spectrum of views on tax(税に対する見解の多様性)」と題するこの図は、企業の「税」に対する投資家の見解がさまざまであることを認めた上で、

Tax efficiency < Tax responsibility < Tax fairness

と整理しています。

 

Tax efficiency(税の効率性)
(税を「最小化すべきコスト」とみなし、利益最大化のため税金を適正化しなければならないと考える立場)

Tax responsibility(税の責任)
(アグレッシブな税行動は、長期的価値を生み出すという企業の受託者責任を損なう可能性があるとの考え方)

Tax fairness(税の公平性)
(税がもたらすより広範な社会経済的影響を考慮し、万人にとっての「公平な」結果を重視する考え方)

 

PRI推奨の税務開示やGRIスタンダードを解釈する際の助けに

ここまでお読みになったかたは、もしかすると

Tax fairnessが最上位概念である、ということがわかったからといって何なの?

と思われたかもしれません。

 

私のおすすめは、

Tax efficiency < Tax responsibility < Tax fairness の関係や
Tax fairness(税の公平性)の定義への理解を

  • PRIが推奨する税務開示(詳しくは、第3回ブログをご参照ください)
  • GRIスタンダード207:税(次回ブログで採り上げます)
  • OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針 第11章  納税(来週採り上げます)

などを解釈する際の助けとしてお使いいただくことです。

 

この点についてはまた改めてお話ししたいと思います。

 

本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上佳子

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「サステナビリティ開示の一環としての税務開示」シリーズ

第1回:サステナビリティ開示の一環としての税務開示①全体像の把握におすすめの資料

第2回:サステナビリティ開示の一環としての税務開示②OECDと「税の透明性」
第3回:サステナビリティ開示の一環としての税務開示③PRIが推奨する税務開示の内容とは

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執筆者

  • 代表取締役 福島 隆史

    公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。

  • 川上 佳子

    中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。