おすすめの本 / サステナ開示をめぐる動向 / 統合報告書
ここ数年、国内機関投資家が、自らの「サステナビリティレポート」を発行するようになっています。
IRを担当されている方以外は、
「え、知らなかった!」という方もいらっしゃるのではと思いますが、
機関投資家自身が発行しているサステナビリティレポート、
ぜひ、目を通しておかれることをおすすめいたします。
なぜなら、
ここには、彼らが
- サステナビリティ課題の中で特に何を重視しているか、
- その背景にはどのような考え方があるのか、そして
- 企業とのエンゲージメントにどのような方針が臨んでいるか
などがしっかりと記されている(ことが多い)からです。
開示状況は企業により異なりますが、
私が個人的に「読みごたえのある」と思っているものを3つほど、ご紹介しておきますね。
2024年版は、第1部で、現在のESGを取り巻く環境やサステナブル投資の実際について、具体事例やパフォーマンス実績を交えながら説明。
マテリアリティとフォーカスエリアの説明が群を抜いて詳しい。
2024年版は、前年度に見直しを実施したマテリアリティ(※ステークホルダーとの関わりを明記)に基づいて前年度の取り組みを説明。
さて。
本日のブログの表題である、“非財務情報という言葉は、もはや「死語」” という表現は、ニッセイアセットマネジメントさんのサステナビリティレポート2024のp.12からとったものです。
この言葉が意図するところについて、同社執行役員の井口譲二氏は、別媒体にて次のように説明しておられます。
この言葉は実際に「死語」になりつつあるのです。例えば気候変動が企業経営に深刻な影響を及ぼすなど、従来の「非財務情報」が財務に及ぼす影響力が明らかに大きくなっています。非財務情報という言葉に代わり、急速に浸透しているのが「サステナビリティ関連財務情報」という言葉です。グローバルな非財務情報の開示基準作りを担う国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)でもこの言葉を使っています。
(出典:日経BP Human Capital online 「人的資本のROI、研修費用…人事が悩む開示の「正解」は? 対談 ニッセイアセットマネジメント井口譲二氏×マーケットリバー市川祐子氏」)
図であらわすと、こういうことですね。
(出典:ニッセイアセットマネジメント「サステナビリティレポート2024」p12)
私も、この見解に賛成です。
かつての財務情報は、「財務諸表等の情報」と「サステナビリティ関連財務情報」を含む、より範囲の広いものになっていく――。
そうであるならば、統合報告書にはより一層、(情緒的な「ストーリー」に偏りすぎない)ロジカルな説明が求められることになります。
前回のブログで私が「近年の統合報告書は「ストーリー」に偏重し過ぎているのでは」と書いたこと、
そして、
(少し前のブログでご紹介したセミナー*1の総括講演でも同様の発言をしておられましたが)
青山学院大学の北川哲雄氏が「人を説得するにはロゴス(論理)、エトス(倫理)、パトス(情緒)の3つが欠かせませんが、和製統合報告書にはロゴスが致命的に不足しています*2」と述べておられること、
これらに共通する「背景」はここにあると思うのです。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 第4回『日経統合報告書アワード』関連セミナー『新時代の開示・報告・説明』~統合報告書はどこに行くのか~
*2 ダイヤモンド・オンライン 2023年10月23日「非財務情報開示は、なぜトップマネジメントの仕事なのか」
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。