当ブログでは先月、「ペロブスカイト」の基本と最新動向についてお伝えしました。
薄くて軽く、曲げられる特性を持つ新しい太陽電池が、東京都をはじめ日本各地で普及しつつあるという内容でした。
また、先日のブログでは、物流業界ではIMO(国際海事機関)の新ルールによって、燃料のライフサイクルでのCO₂排出量評価(LCA)が義務化されているというお話をしました。
本日は、この「LCAによる排出評価」の流れが、建築業界にも波及しようとしていること、そして、そこには 「ペロブスカイト」太陽電池が大いに関係してくるというお話をしてみたいと思います。
建物を建てる材料の調達、施工、運用、解体に至るすべての段階で発生するCO₂を算定する仕組みが「ライフサイクルアセスメント(LCA)」です。
国土交通省は今、この建築物のLCA評価を義務化する方向で、議論を開始しています。
参考:
LCA義務化が始まると、建物に使われるエネルギーの脱炭素化がますます重要になります。
ここで活躍するのがペロブスカイト太陽電池です。この太陽電池は軽量で曲げられ、ビルの壁や窓など従来型太陽電池が使えなかった場所にも設置可能。建物自体が発電所になり、全体のCO₂排出量を大幅に削減できるため、LCA評価を向上させるのに理想的です。
建築設計や施工業者、建材・設備メーカー、不動産開発企業や公共事業の発注者が直接的に影響を受けます。これらの業種は、設計や材料選定の段階からCO₂排出量を考慮し、環境性能を高める取り組みが不可欠になります。
建築物のLCA義務化は、建物の設計から解体までの全ライフサイクルにおけるCO₂排出量を評価し、環境負荷の少ない建築を推進することを目的としています。これにより、建築に関わるすべての業界・業種が、環境性能の向上を求められることになります。
特に、建築設計・建設業界や建材・設備メーカーは、直接的に建物の環境性能に影響を与えるため、LCA評価への対応が急務となります。また、不動産開発・管理業や公共事業発注者も、環境性能の高い建物の提供が求められるため、LCAへの対応が不可欠です。
一方、間接的な影響は、かなり広い業界に及ぶと考えられます。
たとえば…
影響内容:
LCA義務化に伴い、建物の環境性能向上のための改修や設備投資が行われる可能性があります。これにより、賃料や共益費が上昇し、テナント企業がコスト負担を強いられる場合があります。
理由:
建物の環境性能を向上させるための投資コストが、賃料や共益費に反映される可能性があるためです。
影響内容:
LCA義務化により、建物の環境性能が重視される中、製品やサービスを提供する企業も環境負荷の低減を求められる可能性があります。
理由:
建物のLCA評価には、使用される製品やサービスの環境負荷も含まれるため、サプライチェーン全体での環境配慮が求められるためです。
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その他、建物の環境性能を評価する金融機関や投資家、不動産仲介業者も、LCA評価の情報提供や評価基準の変化に対応する必要があります。
今後の変化を見据えて、下記の取り組みなど、今すぐにできることは着手しておかれると良いのではないでしょうか。
・建物のLCA評価方法やCO₂排出の仕組みを理解する
・ペロブスカイト太陽電池を自社施設でどのように活用できるか検討する
・LCA義務化が始まった際に迅速に対応できるよう、社内の理解を深める
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
その他参考資料:
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。