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「指標と目標」を開示することの難しさ ~コカ・コーラ社への
“グリーンウォッシングの極み”批判に思うこと~

ニュース / 資源循環

「コカ・コーラによるグリーンウォッシング」との報道

先週の日経電子版に

プラごみ条約先送り決定、気候変動より危機感薄く

との記事が掲載されていました。

 

プラスチック条約の制定に向けた政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee: INC)については、私、すでに11月のブログでご紹介していましたので、この日経記事についても(後日談として)ご紹介しようかな…と思っていた矢先、

このプラごみ条約にも関連する、大きなニュースを発見してしまいました。

 

コカ・コーラによる大規模なグリーンウォッシング、との報道です。

 

INC-5と同時期、ひそかに「目標を削除」?

ニュースソースは、The Guardianのこちらの記事です↓

Coca-Cola accused of quietly dropping its 25% reusable packaging target

 

In 2022, the company made a promise to have 25% of its drinks sold in refillable or returnable glass or plastic bottles, or in refillable containers that could be filled up at fountains or “Coca-Cola freestyle dispensers”.
(2022年、同社は販売する飲料の25%を、詰め替え可能なまたはリターナブルのガラスまたはプラスチックボトル、あるいは「コカ・コーラ フリースタイル ディスペンサー」で補充可能な容器にするという目標を掲げていた)

 

But shortly before this year’s global plastics summit, the company deleted the page on its website outlining this promise, and it no longer has a target for reusable packaging.
(しかし、今年の国際プラスチック会議の直前に、同社は自社のウェブサイトからこの目標を記載したウェブページを削除し、再利用可能な容器の目標を掲げることをやめてしまった)

(出典は上記のThe Guardian記事。日本語は筆者による仮訳)

 

上記引用の3段落目で言及されている「今年の国際プラスチック会議」とは、今年(2024年)11月25日から12月1日まで開催されたINC-5です。

 

記事によれば、INC-5開催の少し前(正確には「11月20日以降」)に、この「販売する飲料の25%を、詰め替え可能なまたはリターナブルのガラスまたはプラスチックボトル、あるいは「コカ・コーラ フリースタイル ディスペンサー」で補充可能な容器にする」という目標がウェブサイトから削除されたのだとか。

活動家はこれを「グリーンウォッシングの極み(masterclass in greenwashing)」と非難した、と記事は述べています。

 

コカ・コーラ社のウェブサイトを見に行ってみました

事実を確認しようと思い、早速、コカ・コーラ社のウェブサイト(Home>Sustainability>Packaging)を見にいきました。

確かに「タイムライン」は2020年の次がいきなり2024年になっていて、不自然ですね…。

 

そして、2024年の欄には

The Coca‑Cola Company announced updated environmental goals, including for packaging, focusing efforts to use more recycled material in its primary packaging and supporting collection rates…

(コカ・コーラ社は、環境目標の更新を発表しました。その中には、主要パッケージにおけるリサイクル素材の使用拡大と、回収率の向上に重点的に取り組むことが含まれており…)

と書いてありました。

なるほど。

目標を更新したのは間違いないようですね。

 

更新前の目標も発見しました

念のため、更新前の目標が、The Guardianの記事が報道しているとおり「販売する飲料の25%を、詰め替え可能なまたはリターナブルのガラスまたはプラスチックボトル、あるいは「コカ・コーラ フリースタイル ディスペンサー」で補充可能な容器にする」というものであったのか、についても確認してみました。

 

確認した資料は、コカ・コーラ社のこちらの資料です↓

2023 Environmental Update

 

 

・・・ありました。

 

 

p5「Packaging」の3段目、「Collect」の2つ目のGOALに

GOAL: Have at least 25% of our beverages worldwide by volume sold in refillable/returnable glass or plastic bottles or in fountain dispensers with reusable packaging by 2030.4

という記述があります。

 

これが、削除されてしまった目標(のうちのひとつ)なのですね。

 

「指標と目標」を開示することの難しさを改めて感じました

コカ・コーラ社が「グリーンウォッシングの極み(masterclass in greenwashing)」との批判を浴びた本件、個人的には、「指標と目標」を開示することの難しさを強く感じました。

 

と申しますのも。

コカ・コーラ社の掲げた目標がどのような位置づけなのかを確認するため、国内3社(キリンホールディングス/アサヒグループホールディングス/サントリーホールディングス)の容器包装に関する目標を調べてみた*1のですが、どの企業様も、数値目標として掲げているのは「ペットボトルの原料をリサイクル素材や植物由来素材などの素材にする」ことに関するものだけとなっており…

※「ボトルtoボトル」の水平リサイクルなどにも、もちろん各社様取り組んでおられるのですが、数値目標を掲げるのは難しいのだろうな…という事情は以前のブログでもお伝えした通りです。

 

こうした現状から見ても、コカ・コーラ社が以前掲げていた

「販売する飲料の25%を、詰め替え可能なまたはリターナブルのガラスまたはプラスチックボトル、あるいは ディスペンサーで補充可能な容器にする」

は、相当に高い目標だったのではないでしょうか。

 

その「野心的」ともいえる目標を掲げた、しかも(2023 Environmental Updateの記述によれば)実際に取り組みを進めていたことは、むしろ称賛されるべきものではないかと。

ですが、その目標が(自主的なものであれ)「ひそかに削除された」(少なくともそう見えた)だけで批判されるというのは、企業にとっては大変な時代だ…と思わざるを得ません。

 

「指標と目標」を掲げることは、かくも難しい。

だからこそ。

せめて私たちは、世界的な規制やステークホルダーの期待、自社の事情などの間で苦労しておられるサステナビリティ担当者さまに寄り添いつつ、よき着地点を見出すお手伝いをするスタンスを保ち続けなければ…と改めて思ったのでした。

 

ーーー
本日もお読みいただきありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 3社の容器包装に関する目標はそれぞれ下記の通り。

■キリンホールディングス

日本国内におけるリサイクルPET樹脂の割合
2050年 100%(環境ビジョン2050)
2027年 50%(プラスチックポリシー)
2024年 38%(非財務目標)

(出典:同社ウェブサイト「容器包装の取り組み」)

 

■アサヒグループホールディングス

2030年までに、PETボトルを100%環境配慮素材(リサイクルPETまたはバイオマスPET)に切り替えることを目指します。

ラベルレスボトルを拡大するなど、プラスチック製容器包装の重量削減を目指します。

プラスチック以外の容器や、新しい環境配慮素材の研究開発を目指します。

(出典:同社ウェブサイト『容器包装2030』)

 

■サントリーホールディングス

2030年までにグループが使用するすべてのペットボトルについて、リサイクル素材や植物由来素材等100%に切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにする

(出典:同社ウェブサイト「サントリーグループの2030年目標」より作成)

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