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HINTサステナ情報のヒント

ISSBが検討している次の2テーマについて、
アップデート情報をお伝えします

人的資本開示 / 生物多様性 / 開示基準等

日本証券アナリスト協会さんは、
昨年に続き今年も、「ISSB基準セミナーシリーズ2024」を全4回で開催されるようです。

 

第1回の動画が先日アップされていましたので、私も早速視聴しました。
タイトルは、「サステナビリティ情報開示の進展と企業価値向上のための対話『第1回:サステナビリティ開示基準導入に向けての期待と課題」。

 

第1部では、ISSBが現在、次なる基準策定候補として検討を進めている、2つのリサーチ・プロジェクトについてもISSB・小森理事からお話がありましたので、本日のブログではその概要をお届けします。

 

リサーチ・プロジェクトの対象となっているテーマは?

1. 生物多様性、生態系及び生態系サービス(BEES)
■なぜこれをテーマにするのか?
  • ひとえに投資家の間での関心の高まりが背景

(補足)
なお、最初の調査には、SASB基準、CDSBガイダンスおよびTNFDの検討が含まれるそうです。

小森理事からは、「個人的にはTNFDがかなり大きな部分を占めるのではないかと思っているので、(世界で最も多くEarly adopterが出ている)日本企業のBEESというテーマに対するアドバンテージが発揮されるのではと期待しています」とのコメントがありました。

■サブトピックとしてカバーされる範囲は?
  • 土地利用と土地利用の変化
  • 汚染
  • 資源利用
  • 侵略的な外来種

 

2. 人的資本
■なぜこれをテーマにするのか?
  • 世界中のすべての規模とセクターの企業に影響があるテーマにもかかわらず、開示の現状は「やや一貫性が不足」しており「比較可能性も欠如」
  • そこで、投資家のニーズを踏まえてテーマとした
■サブトピックとしてカバーされる範囲は?
  • 従業員の福利
  • DEI
  • 労働力への投資
  • 代替的労働力
  • バリュー・チェーンにおける労働条件

小森理事からは、「まさに、各日本企業さんの現場で起きている人的資本の課題・テーマ」との発言がありました。

 

2つのテーマは「絶対に」新たな基準となるのか?

絶対に基準となるわけではない
  • いきなり基準設定にいくということではなく、まず、その前提としてあるのが資本市場として新しいテーマでの基準策定が必要かを判断する
  • なぜなら、新しい基準ができるということは企業にとっては負担が増える・コストがかかること
  • 資本市場プレイヤーそれぞれについて、基準を策定することのプラスマイナスを一つひとつ細かく分析をしていく。そしてトータルで、投資家だけでなく企業にとっても基準策定をすることがプラスになるという判断をくだすことができた場合に、次のステップである基準策定にGOサインが出ることになる
  • ただし、コメントを見る限りでは非常に強い要望をいただいているので、完全に個人的な感想であるが、基準設定もなされるのではないかと考えている
今後の進め方
  • 今後約6か月をかけてリサーチ・プロジェクトを行い、最終的には、ボードミーティングで「基準設定をする必要があるか」という判断を下した上で、次のステップ(=基準策定)に臨むことになる
  • したがって現段階では、100%基準設定するかどうかについて確定的なことは言えない
  • 基準設定対象となった場合、時期的なことについても確たることは言えない
    (理由:リサーチ・プロジェクトの結果次第で、どの程度の時間や労力が必要となるかが変わるため)

 

リサーチ・プロジェクトの対象とならなかったテーマについて

  • 人権
  • 報告における統合

の2つについては、「次の2年間の作業計画」の一部とはならない(パブリックコメントを踏まえた結果、いったん外れることとなった)

<人権について>

BEESでサプライチェーンにおいてマテリアルな影響がある場合、人権についても触れる可能性を残した形でリサーチ・プロジェクトを進めることにはなるが、限定的な議論になると思われる

<報告における統合について>
  • 統合報告自体のテーマではない
  • TCFD、あるいはほかの開示基準、そして統合報告のフレームワーク等を含めたいろいろな開示基準やイニシアティブを一つひとつ検証しながら、必要な部分をどこかでまとめることができないだろうか?という問題意識をもってこれから取り掛かる作業(が、「次の2年間の作業計画」の一部でない)
    → 将来に向けたテーマ
  • ISSBとしては統合報告フレームワークの継続的な使用を支持。具体的には、IFRS S1において統合報告フレームワークをベースのコンセプトとして使用しているので、その形を維持しながら、今後のS3、S4の議論に反映させていこうと考えている

以上、ご報告でした。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


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