「メセナは今、どうなっているのか」シリーズの2回目です。
(第1回のブログはこちら)
コロナ禍を経て、また、 “投資者の視点を踏まえた 「資本コストや株価を意識した経営」” への圧力が高まる中で、企業のメセナはどうなっているのか――前回のブログに書いた自分自身の問いへの答えを見つけるため、今回はまず、最近のメセナの状況を数字でざっくり把握してみたいと思います。
企業等が行うメセナは、そもそもどのぐらいの規模のものなのでしょうか。
2018年に刊行された書籍「芸術文化の投資効果 メセナと創造経済」(加藤 種男著, 水曜社)によれば、
企業はこれまで一般に考えられている以上に、芸術文化に投資を続けてきた。 企業メセナ協議会の調査によっても、その額は年間九百億円規模で推移しており、文化庁の文化予算が一千億円レベルであることを考えると、これに匹敵する規模であるといえるであろう。
とのことでしたので、早速、実際の数字を調べてみることにしました。
ソースは、企業メセナ協議会の「メセナレポート」です。
「メセナレポート」で公表されている数字を調べた結果、とりあえず3つのことがわかりました。
上述の「メセナ予算の総額が「年間九百億円規模で推移しており、文化庁の文化予算が一千億円レベルであることを考えると、これに匹敵する規模」との説明が当てはまるデータとして確認できたのは、直近では2014年が最後だったようです。
直近5ヵ年で見るとメセナ予算規模(総額)は、文化庁予算の3/4程度=750億円程度となっています。
※メセナ活動費総額は企業メセナ協議会の「メセナレポート」より筆者作成。2015~2018年は活動費総額の開示がなかったため、未作成。なお、活動費総額はその年度の回答企業数に左右されるため、経年変化を見る際には注意が必要。
※文化庁予算額は「文化芸術関連データ集 令和6年3月【令和5年度第2版】」の「文化庁予算」(p8)より筆者作成。なお文化庁予算は令和元年度からは新たに国際観光旅客税を財源とする事業が加わったが、データの継続性を確保するため、上記グラフではこれを除いた値を用いた。
企業メセナ協議会の「メセナレポート」では、(一部の年を除いて)メセナ予算を「企業」と「財団」に分けて開示しています。
この内訳によれば、メセナ予算総額の内訳はおおむね「企業:財団=1:3」の割合となっています。
※グラフデータに関する注意点は①に同じ
グラフの注記にも記載しましたとおり、「メセナレポート」で公表されている活動費総額はその年度の回答企業数に左右されるので経年変化を見る際には注意が必要ではありますが…
コロナ禍によって影響を受けたのは主に「財団」のメセナ予算のほうで、企業のほうは全体の予算規模は減っていない(かもしれない)ということが見て取れます。
以上①~③は、特に②③について内容の検証が必要そうではありますが、まずは全体像の把握結果をお伝えいたしました。
上記の数字だけでは、企業や財団のメセナがコロナ禍の影響を受けたのか、直近ではその影響から抜けつつあるのかを読み取ることができませんでしたが、ひとつ言えることがあります。
それは「メセナ協議会の会員数は2018年以降、明確な減少傾向にある」ということです。
この数字が何を示しているのか、顔ぶれの変化なども確認しつつ、今後、また回を改めては考察していきたいと思っております。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。