先日、東京都美術館にて「デ・キリコ展」を見てきました。
(※展示室内は撮影NG。この写真は展示室外の撮影OKスポットで撮ったものです)
デ・キリコといえば、マヌカンを主題にした絵画が有名です。写真右の作品「不安を与えるミューズたち」もそのひとつですが、見たことがある!という方も多いのではないでしょうか(私が学生の頃は、美術の教科書に載っていました)。
さて。「マヌカン」絵画のひとつである「ヘクトールとアンドロマケーの別れ」は確か、岡山の大原美術館のコレクションにあったように記憶しておりまして。岡山かぁ…これまで行く機会がなかったけれど、いつか行ってみたいなぁ…他に行きたいところは…などと今週の私は、美術館のことを色々と考えていました。
そんな折、日経電子版で「DIC、川村記念美術館を休館へ 資産効率で投資家が要望」とのニュースを見つけました。
ああ…確かに、DIC川村記念美術館はアクセスが少し不便*1だったからなぁ…
資産効率改善のためにはそうなってしまうのか…残念だなぁ…
と思ったところで、はたと気が付きました――「投資家が要望」という文字の存在に。
そうでした。
DICといえば昨年12月、「あの」オアシス・マネジメント*2が株式を取得したとの報道がなされていたのでした。(ここにもアクティビストが…)
香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントがインキ大手のDICの株式の6.9%を保有していることが28日、分かった。オアシスが同日、関東財務局に大量保有報告書を提出した。ポートフォリオ投資と重要提案行為を目的とし、「株主価値を守るため、重要提案行為を行うことがある」としている。
(出典:日経電子版 2023年12月28日「オアシス、DIC株を6.9%保有 重要提案行為も」)
DIC川村記念美術館の今後について、上述の日経電子版記事ではそれ以上のことはわかりませんでしたが、「美術手帖」のサイトにはもう少し情報がありました。
価値共創委員会は「美術館の存在価値や目的、理念を明確化する必要があり、とくに株主に対する説明責任が求められる」としたうえで、現状のままの維持・運営は難しいと提言。東京への移転を想定した「ダウンサイズ&リロケーション」か「美術館運営の中止」を案として提出した。
同社取締役会は上述の委員会案を受け止め、今後の美術館運営に関して最終的な結論には達していないとしながらも、次の決定を下した。
まず、美術館運営の効率化のための「ダウンサイズ&リロケーション」を具体的なオプションとして検討し、今年12月までに結論づけ。加えて作品売却による経済価値等を総合的に勘案し、美術館運営の中止の可能性も排除せず詳細を検討するという。
今後の美術館運営の決定を速やかに実行するため、同館は2025年1月下旬からの休館を決定。具体的な休館日程については、決まり次第ウェブサイト等で発表される。
(出典:美術手帖 2024年8月27日「DIC川村記念美術館が休館へ。美術館運営の位置づけを再検討」)
「作品売却」も勘案。「美術館運営の中止の可能性も排除せず」とのことですので、コレクションが散逸してしまう可能性も大いにあると考えられます。
この話題、私はサステナビリティの文脈でも気になるテーマではと思っております。
理由は、DIC川村記念美術館がメセナの代表的存在であるためです*3。
とはいえ、ここ2年ほど、DICレポート(統合報告書)で「美術館」について言及される回数が減るなどの変化も出ていたことも事実です。
コロナ禍を経て、また、 “投資者の視点を踏まえた 「資本コストや株価を意識した経営」” への圧力が高まる中で、企業のメセナはどうなっているのでしょうか。俄然気になってきましたので、この機に調べてみたいと存じます。少し時間はかかるかもしれませんが調査を進め、発見があればまたご報告いたします。
本日もお読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
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*1 DIC川村記念美術館は千葉県佐倉市にあります。アクセスの詳細はこちらをご覧ください。
*2 香港の投資ファンド。花王などの企業に株主提案をしたことで話題になりました。
*3 公益社団法人 企業メセナ協議会によれば、
のような受賞や認定を受けており、企業メセナ協議会のホームページには「DIC株式会社 DIC川村記念美術館 色彩を扱う会社がこめた思い-地域に愛される美術館-」というページが掲載されています。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。