8月22日の日経電子版オピニオン「私見卓見」に「平易な日本語を心がけよう」というコラムが掲載されました。
サステナビリティレポートや統合報告書の制作や英訳に取り組んでおられる皆さまにもご参考になる話かと思いますので、共有いたします。
コラムの論旨は、おおむね以下のようなものでした。
(1) 日本の府省庁や企業の年次報告書のCEOメッセージはわかりにくい
(理由:前者は「曼荼羅」の情報が多すぎるから。後者は長い文や流行語が多いから)
(2) 情報の受け手が必要な情報を簡単に理解できる「プレインランゲージ」
→ 米国やEUでは、公文書に採用しており、ISOもその原則を規格化
(3)明確な表現のポイントは:
①読者の特定
②タイトルや見出しの工夫
③簡単な用語の使用
④「一文一意」の徹底
⑤二重否定の回避
(4)25年4月より東証プライム企業には英語での投資家情報を開示義務も
→ 政府・企業の公表文書はプレインランゲージ原則に沿い海外にも通じる明確で平易な表現を
このコラムは、筆者の立場上「結論ありき」になってしまうのは否めない*1ため、そこは割り引いて読む必要があると思いますし、ESGを「はやり言葉」と断じた部分には同意できませんが…
また、企業の年次報告書には最高経営責任者(CEO)の挨拶がある。だが、150文字を超える長い文が多く、「ESG(環境・社会・企業統治)経営」などのはやり言葉が目立つようでは、投資家に経営方針は伝わらない。
(出典:日経電子版「平易な日本語を心がけよう 山田肇氏」2024年8月22日)
それはさておき、コラム中でも紹介されている、ISO 24495-1:2023「Plain Language – Part 1: Governing principles and guidelines」や、米国の「Plain Writing Act」は、2024版のサステナビリティレポートや統合報告書の「仕上げ段階」で文章をチェックされる際に役立つのではと考えましたので、その共通項を一部、ここにご紹介いたします。
ISO 24495-1:2023には「読者のニーズに焦点を当てること」という明確な指針があります。読者が情報を理解し、必要な行動を取るために何が必要かを考慮して文書を作成することを推奨しています。
Plain Writing Actでは、連邦政府の文書が「一般の人々が理解できる」ことを義務付けており、読者が簡単に内容を理解できるようにすることを重視しています。
ISO 24495-1:2023では「知っている単語を使うこと」を推奨しています。読者が理解できる限りでの専門用語の使用が容認されているように見えます。
Plain Writing Actでは、明確で簡潔な言葉づかいを義務付けています。専門用語や略語を避け、必要な場合はその説明を添えるなど、読者が情報を容易に理解できるようにすることを求めています。
ISO 24495-1:2023では、「明確で簡潔な文を使用すること」が示されています。過度に長い文や複雑な文構造を避けることが求められています。また、情報は論理的な順序で整理し、読者が情報をスムーズに追跡できるよう、文書は明確な見出しやサブセクションに分けることを推奨しています。
Plain Writing Actでは、文書が論理的な順序で構成され、読者が情報を容易に追跡できるようにすることを求めています。
以前、「AIがESG情報を処理する時代、サステナビリティレポートはどう作る?」にも書きましたが、2024版のレポート(サステナビリティレポートも統合報告書も)は、これまで以上に「AIに読み込ませる」機関が増えると思われます。
その結果、特に「英語版を発行していない」もしくは「英語版の発行が遅れる」企業さまの場合は、自動翻訳にかけられたテキストがAIの読み込み対象となる可能性が高いとみてよいでしょう。
こうした環境下であることを踏まえ、制作ご担当者さまには、2024版のレポートが「明確で簡潔な言葉づかい」や「論理的な文章構成」になっているかを今一度ご確認いただけると安心なのではと存じます。
本日も、お読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1: コラムの筆者である山田肇氏は、一般社団法人日本プレインランゲージ協会の理事でもあります。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。