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HINTサステナ情報のヒント

AIがESG情報を処理する時代、
サステナビリティレポートはどう作る?

サステナ開示をめぐる動向

本日は月初めですので、短めに。

トレンドの話をしたいと思います。

AIがESG情報を収集し、情報処理する時代がやってきた

7月30日付の日経電子版に「ニッセイアセット、AIで統合報告書を分析 ESG投資で」という記事が載っていました。ニッセイアセットマネジメントさんでは今後、統合報告書をAIに読み込ませ、ESGに関する項目などを自動で抽出するのだとか。

なお、これに関連する内容として、日経電子版には7月31日付で「ESG情報開示はAI活用で 中久保菜穂氏」という記事も載っていました。中久保さんは昨年発売された書籍「AIによるESG評価 ―モデル構築と情報開示分析―」の執筆者のひとりでもあるので、興味を持って記事を読ませていただきました。

 

AIを意識して、サステナビリティレポートの作り方を変えるべき?

サステナビリティ担当者さまとして気になるのは、やはり「AIが導入されることで、サステナビリティレポートの作り方って変わってくるの?変えなくちゃいけないの?もしそうならどんなふうに?」という部分ですよね。

「ニッセイアセット、AIで統合報告書を分析 ESG投資で」「ESG情報開示はAI活用で」の両記事を読み解くと、少なくとも以下の3点には留意する必要がありそうです。

1.リスクや課題を含め、真摯な開示をする

(以下をお読みください)

AI活用は実態が伴わない見せかけのビジネスによりステークホルダーに誤解を与える「ESGウォッシュ」対策にも有効だ。例えば、企業が自社は適切な人権対応をしていると開示したのにもかかわらず、強制労働などの人権侵害の実態が明るみに出ることがあるが、AIを用いれば企業はモニタリングを強化できる。

 

またソーシャルメディア上での現場の訴えや非政府組織(NGO)による報告書などがリアルタイムで参照可能になり、サプライチェーン(供給網)全体での課題発見がしやすくなる。評価者側も実態を迅速に検知し、評価に反映可能になることでウォッシュ防止に寄与する。

(出典:2024年7月31日 日経電子版「ESG情報開示はAI活用で 中久保菜穂氏」)

2.統合報告書内のサステナビリティ開示を省略しすぎない

ニッセイアセットマネジメントさんがAIに読み込ませる対象は「統合報告書」とありましたし、実際、投資家が優先的に参照するのはサステナビリティレポートよりも統合報告書であることのほうが多いでしょう。

であれば、統合報告書にもサステナビリティ開示をしっかり入れておく必要がある、ということになりそうですね。

(統合報告書のトレンドは今、スリム化の方向に向かっているように見えますので、その中でサステナビリティ開示が「削減対象」となってしまわないように留意していきたいものです)

3.テキストや図の書き方・使い方に留意する
■複雑な構造の文章や長文を避け、わかりやすく書く

企業はAIと人間どちらの評価者にとってもわかりやすいESG情報開示を行うことが必要だ。

 

具体的には、誰にでも読みやすい文章を心がけ画像だけでなくテキストでも説明すること、自動翻訳の対象となることを見据えて簡潔な文章構造を意識することなどがポイントとなる。

(出典:2024年7月31日 日経電子版「ESG情報開示はAI活用で 中久保菜穂氏」)

 

確かに、日本語しかない情報に対し、海外投資家は「自動翻訳した文章をそのまま使用している」と、東証の資料にも記載されていました。誤訳されかねないような文章(例:1文1メッセージになっていない、1文が長すぎる、主語と述語が離れすぎている、企業独自の用語を多用しすぎる)にしないことは、より一層心がけたほうがよさそうですね。

■図だけではなく、テキストでも説明する

これは盲点になりそうな部分かもしれません。

AIが画像認識を的確に行うためには、適切かつ大量の学習データを準備して事前に学習させる必要があります。グラフなどであればそれは難しくはないでしょうが、企業さまの統合報告書やサステナビリティレポートに掲載されている図はオリジナルのものも多いですので、解析の精度を上げるのは(当面)難しそうに思えます。

だとすれば、AIを意識してレポートを作成する際には当面、「文章量を削減するために図を載せる」のではなく、「図で説明することは文章でも説明する」ようにしなければならない…と言えそうですね。

もしかすると「データブック」よりも「サステナビリティレポート」のほうが望ましい、とも言えるのかもしれません…(もちろん、データブックの形式にもよりますが)。

 

本日も、お読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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