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供給・需要・ライセンス——循環経済/サーキュラ―エコノミーを戦略として語る3つの視点とは

サーキュラーエコノミー / プラスチック / 価値創造ストーリー / 勉強用(初学者様向け) / 統合報告書

この記事の3つのポイント

  • サーキュラーエコノミーは「良いこと」ではなく、資源調達に関する戦略として再定義されつつある
  • 「供給」「需要」「社会的ライセンス」という3つの視点から循環への取組を整理すると、業界ごとの特性が見えてくる
  • 統合報告書では、自社にとってどの視点がもっとも重要かを見極め、戦略として語ることが説得力につながる

 

前回の記事(循環は「戦略」だ ――ドラギ・レポートとAZECが示す、次の10年の競争力のヒント)では、EU「競争力コンパス」やAZECアクションプランに触れ、循環が環境施策ではなく経済・脱炭素・安全保障を束ねる戦略ハブになっていることを紹介しました。

本日のブログでは、統合報告書を書くときに、この「循環=戦略」という発想をどう活かせばよいのかを考えてみたいと思います。

 

「良いこと」から戦略へ ~語り方シフトの必要性

企業さまの統合報告書を読んでいると、サーキュラ―エコノミー (循環経済)の書き方が、極端に言えば

- なぜそれを行うのか→「良いことだから」
- 記載内容→ リサイクル率や再生材使用率の数字の羅列
- 指標と目標→「努力目標」的な書き方

となっているケースをよく見かけます。

 

この書き方では不十分となってしまう理由は、読み手が知りたいことは「その取り組みが業界固有の課題やリスクをどう解決し、どんな機会を生み出すのか」にあるためです。

 

背景には、サーキュラーエコノミーが多くの業界において、「どうやって必要な資源を確保・活用し続けるか」という経営課題そのものになってきているという実態があります。

ここでいう“資源の調達”とは、原材料の物理的確保だけでなく、制度上の利用義務への対応や、地域社会からの使用許可(社会的ライセンス)といった観点も含まれます。

 

事例で見る「調達の問題」

■銅のケース(供給サイドの確保)

JX金属が茨城県ひたちなか市で銅のリサイクル拠点を竣工したというニュースがありました。

背景には、製錬マージンの低下により、鉱石依存の収益性が悪化しているという現実があります。

そこで、「都市鉱山」=国内の廃棄物を資源供給源とすることにより、調達リスクを下げ、ROICを改善するという取り組みに踏み出したのです。

■プラスチックのケース

プラスチックに関しては「需要サイドの調達」をめぐる課題が見られます。

EUや日本では「再生材を〇%使わなければならない」という制度上の義務がすでに設計されている一方、実際には質の良い再生材の供給が追いついていないのが現状です。

そのため、飲料メーカーや消費財メーカーは「制度を守るためにどう調達するか」という競争に巻き込まれています。

最近では、飲料メーカーと自治体が「ペットボトルの水平リサイクル」に関する協定を結ぶ動きも見られます。これは、再生材を“直接調達”するための枠をつくるアプローチだと言えます。

 

3つの視点で捉える「循環=調達戦略」

循環が経営における戦略として重要になる局面は、次の3つに整理することができます。

類型① 供給サイドの調達確保型(入り口)

銅・鉄・レアアースといった金属資源に代表されるように、「資源がそもそも手に入るのか」という問いに直面している業界では、循環による供給源の多様化が戦略のカギになります。

(例)

  • 銅:都市鉱山を収益源として取り込む動き
  • 鉄:輸入依存の高い鉄鉱石に代わり、電炉×スクラップのシェアを拡大
  • レアアース・電池材料:EV普及に伴い戦略物資化し、廃電池リサイクルの整備が加速

 

「循環しなければ原料そのものが手に入らない」という供給リスクが、企業の戦略を動かしています。

類型② 需要サイドの利用保証型(出口)

逆に、「使うことが義務化されているのに、確保が難しい」というケースでは、需要サイドの確保が課題になります。

(例)

  • プラスチック:制度義務のもとで再生材の質と量をどう担保するかが鍵
  • 古紙:制度で利用が義務化されており、2024年時点で利用率66.6%、回収率81.7%と高水準
  • 再生PET繊維:アパレル業界では「2030年までに50%」の宣言が広がる
  • グリーン水素:供給体制は未成熟ながら、政府は2030年に300万トンの利用目標を掲げ、「使うこと」が先に決まっている構造

 

「循環しなければ市場が成立しない」——このような需要側の制約が、企業の調達行動を規定しています。

類型③ 社会的ライセンス型

物理的に資源を確保できても、それを“使い続けられるか”は別問題です。

この問いに答えるのが「社会的ライセンス」という視点です。

 

  • 飲料企業の水源涵養活動:地域との信頼関係を築くことで、水の利用継続性を確保
  • 森林認証(FSC・PEFC):資源の合法性や持続性を社会的に担保し、「市場にアクセスするための前提条件」として機能

 

使う側の都合だけでなく、「社会から認められ続けるかどうか」という軸も、循環戦略に不可欠な視点です。

 

実際には「複合型」がほとんど

これら3つの類型は、実際の産業では明確に分かれるわけではありません。むしろ、複数の類型が重なり合っているケースが大半です。

 

(例)

  • 飲料業界:
    水は「社会的ライセンス型」、PETボトルは「需要サイド型」、アルミ缶は「供給サイド型」
  • アルミ業界:
    一次原料は「供給サイド型」、顧客からのグリーンアルミ要求は「需要サイド型」、CO₂排出抑制の期待は「ライセンス型」

 

したがって、(特にシングルマテリアリティの語り方が重視される)統合報告書で語るときのポイントは、「自社にとってどの類型の色がもっとも濃いのか」を見極め、その強弱を整理して語ることにあります。

見出し例(統合報告書向け)

- 「原料供給の安定確保に向けた都市鉱山戦略」(供給サイド)

- 「再生材需要の高まりに応える調達力強化」(需要サイド)

- 「地域との共生を通じた社会的ライセンスの維持」(社会的ライセンス)

 

まとめ

循環の取り組みは、単なる「良いこと」ではなく、資源調達の課題をどう解決するかという戦略の物語です。

統合報告書では、

- 供給
- 需要
- 社会的ライセンス

という3つの補助線を重ね合わせて、自社がどのような条件下で循環に取り組んでいるのかをストーリーとして語ることで、取り組みの羅列を超えた説得力が生まれます。

 

 

統合報告書制作のご参考となりましたら幸いです。

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本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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