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睡眠障害内科の誕生が企業にもたらすものとは?――人的資本経営と健康経営をつなぐ「睡眠KPI」の可能性

ニュース / 人的資本開示 / 健康経営

この記事の3つのポイント

  • 「睡眠障害内科」の新設で、従業員の受診導線が明確に
  • 業種によっては従業員の睡眠に関する対策は、事業継続に欠かせないリスクマネジメント課題
  • 睡眠改善KPIと事業成果KPIを結びつけることで、人的資本開示に新たな切り口を

 

厚生労働省が「睡眠障害」を標榜診療科名に追加するかどうかの審議を開始したとのニュースがありました。

(ご参考記事)

診療科名「睡眠障害内科」可能に、厚労省部会が初の追加を議論(日経電子版、2025年9月4日)

 

診療科名に関する本格的な議論が再開されるのは、2008年の制度見直し以来、約17年ぶりです。世界的に見ても睡眠時間が短い日本にとって、これは単なる“医療制度の小さな改訂”以上の意味を持ちそうです。

 

一見、企業様とは無関係にも思える話かもしれません。
けれども実はこれ、企業の「人的資本経営」や「健康経営」の実装力を底上げする、受診インフラ整備の大きな一歩になりうるのです。

 

※なお本件は現在、審議開始の段階であり、今後パブリックコメントなどの手続きを経て施行の可否が決まります。

 

睡眠課題と企業リスク

日本睡眠学会の調査では、調査対象の6割が睡眠に課題を抱えていると回答しました。
しかし、医師に相談する人はわずか1割弱。

その結果として不眠や睡眠時無呼吸症候群が放置されることは、

- プレゼンティーズム(働いているが能率が落ちている状態)の増加
- 労災や交通事故リスクの上昇

といった形で、企業の生産性や安全に直結します。

 

特に運輸業や製造業、交代制勤務など「眠気」が業務の安全性に直結する職種では、従業員の方々の「睡眠」に関する対策は、事業継続に欠かせないリスクマネジメント課題となります。

 

健康経営・人的資本開示への波及効果

実はすでに、「健康経営度調査」には「睡眠による休養感」がKPIとして組み込まれています。

今回の「睡眠障害内科」親切によって睡眠の診断・治療ルートが明確化され、治療を受ける人が増えれば、次のような形でのKPI設計が可能になりそうです。

 

  • プロセスKPI:スクリーニング受診率、紹介完了率、治療継続率
  • アウトカムKPI:休養感の改善、プレゼンティイズムの改善、労災・事故の減少

 

そしてこれらの成果を、統合報告書や人的資本開示で「事業KPI」と結びつけて語ることで、「健康→生産性→企業価値」の橋渡しがより具体化します。

 

「睡眠障害内科」がもたらす変化

ところで、診療科名が変わると何が変わるのでしょうか?

診療科名が明示されれば、これまで多くの人が感じていた「どこを受診すればよいかわからない」という壁が下がり、受診の入口が明確になることが見込まれます。

企業様にとっては、従業員を適切な医療へ橋渡しする紹介ルート(治療パス)が整理しやすくなり、健康経営の実効性が高まる可能性があります。

また、診療科の明示によって、学会認定の専門医療機関との連携もしやすくなり、EAP(従業員支援プログラム)や産業医体制と医療の橋渡しがしやすくなる点も実務上のメリットです。

 

投資家に語れるストーリーへ

投資家は「健康施策が企業価値にどうつながるか」を知りたがっています。

この点、身近な問題ながらKPIの設定が難しかった睡眠について「睡眠改善KPI」と「事業成果KPI(事故率、生産性など)」を結びつけて開示することができれば、健康経営の成果を定量的に説明する強い材料になります。

そして「睡眠障害内科」の新設は、従業員にとっての“受診のしやすさ”と、企業様にとっての“健康経営の語りやすさ”を同時に広げてくれる大きな一歩になると期待されます。

 

貴社でのお取り組みのヒントとなりましたら幸いです。

 

今週もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、来週のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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