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IOWNは“おいしさDX”を支えるか ― 次世代ネットワークが製造現場にもたらす可能性(仮に導入されたとしたら)

DX / ニュース

この記事の3つのポイント

  • IOWNは超低遅延・省電力通信により、製造DXの安定稼働と品質確保を支える可能性がある
  • ネットワーク基盤を活用した電力最適化は、工場のピーク抑制や脱炭素対応を後押しし得る
  • 工場が地域電力網と協調し、サステナビリティ戦略の一部となる未来像が描かれている

 

前回のおさらいと今回の問い:DXの次なる基盤とは?

前回の記事では、サントリー大阪工場のロボティクス導入を取り上げ、「DXは単なる効率化にとどまらず、“おいしさの時間”を生む投資である」という視点から、ものづくり白書2025の方向性との接点を読み解きました。

効率化によって生まれた時間やリソースをどこに再配分するか。
サントリーはそこに「美味品質の追求」や「顧客体験の深化」を据えることで、AIやロボットとの“共創”という形でDXを昇華させているように見えます*1

 

では今後、そのような現場がさらに高度化・拡張していくとき、次に支える基盤は何でしょうか。

そのヒントのひとつとして私が注目しているのは、NTTが提唱するIOWN構想(Innovative Optical and Wireless Network)です。

 

※本記事は、現時点でサントリー大阪工場にIOWNが導入されていることを示すものではありません。
あくまで「もし今後、工場にIOWNのような次世代ネットワーク技術が導入されるとしたら」という仮定に基づき、製造現場のサステナビリティ課題との接点を探る目的で執筆しております。

 

製造現場におけるIOWNの可能性とは?

IOWNとは?

IOWNは、NTTが提唱する2030年頃の実現を目指した次世代の通信基盤で、電気の代わりに“光”でデータを送る「オールフォトニクス・ネットワーク」を核としています*2

公式資料では、従来比で通信遅延1/200、通信容量125倍、消費電力1/100を目指すとされています*3

とはいえ、本記事で注目したいのはその技術仕様そのものより、「製造現場の実務課題にどう応えられるか?」という点です。

サントリー大阪工場のようにロボティクスやAIを導入して“おいしさDX”を実現しようとしている現場を念頭に置くと、次のような課題に応えられる可能性があります。

(1)安定稼働と品質を守る“神経網”としての役割

スマート工場では、センサー・設備・制御システムがリアルタイムに連携することが安定稼働のカギとなります。IOWNの「超低遅延」「高精細データ即時伝送」が実現すれば、

  • 設備異常や異物混入などを即時に察知・対応できる
  • 数十台のロボットをズレなく連携・制御できる
  • 遠隔からでも“現場にいるかのように”設備点検や操作ができる

といった、“品質を守るDX”の次のステージが現実味を帯びてきます。

NTTはすでにIOWN/APNを用いた遠隔ロボット操作やハプティクス制御の実証を行っており*4、この応用が工場運営に拡張される可能性は十分にあると考えられます。

(2)電力の最適化 ― DXにともなう電力負荷への対応として

AIやロボットは電力を多く使うため、消費電力のピーク管理が現場にとっての新たな課題です。最近では、地域の電力ひっ迫や脱炭素の要請とも無関係ではいられません。

この点、IOWNのようなリアルタイムかつ大容量のネットワークが工場に導入されれば、

  • 設備ごとの電力使用量をリアルタイムに見える化
  • 生産スケジュールと電力消費をAIが連携・最適化
  • 通信自体も省電力化されるため、情報活用コストも下がる

といった形で、「工場のエネルギー設計そのもの」を柔軟にマネジメントできるようになります。

実際、IOWNを用いたデータセンター間の実証では、処理を再エネ供給に応じて動的に移動させ、再エネ利用率を最大31%高めた事例が報告されています*5。これを製造現場に応用すれば、ピーク電力平準化や脱炭素対応に寄与し得るのではないでしょうか。

(3)地域との共生 ― スマートグリッドの一部としての工場

電力を大量に使う工場が、地域の電力網に負荷をかけていないか。あるいは逆に、地域の再生可能エネルギーとうまく連携できているか。こうした地域電力との共生は、サステナビリティ対応の新たな論点になりつつあります。

この点、仮にIOWNが導入されれば、将来的には、工場と電力会社の間で以下のようなリアルタイム協調も夢ではなさそうに思えます。

  • 地域で電力が不足しそうなときは、工場が負荷を一時的に抑制
  • 逆に再エネ電力が余っているときに、生産を集中
  • CO₂排出の少ないタイミングを狙って稼働を調整

NTTの実証でも、IOWNを活用した需要側応答(デマンドレスポンス)や再エネ連携の有効性が確認されています*5。 将来的に工場が「地域のエネルギー安定に貢献するインフラ」として再定義される可能性も見えてきそうです。

 

ネットワークが戦略資産になる日

「DX」と聞くと、効率化や自動化といったイメージが先行しがちです。ですがサントリー大阪工場のように、“おいしさ”という体験価値にまで踏み込む製造DXが現実になりつつある今、私たちはその土台となるネットワークのあり方にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。

IOWNは、単なる通信の進化ではなく、品質・電力・地域共生といった、製造の本質的課題に対応し得る「戦略資産」にもなる可能性があると考えられます。

 

IOWNの本格的な導入はこれからという段階ですが、だからこそ今のうちに、

ー 自社の現場にとって、どんな貢献がありそうか

- 自社のどのようなサステナビリティ課題を支える存在になり得るか

などを考えておくことは、価値創造を考える上で重要な一手ではないでしょうか。

 

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本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 出典
サントリー公式ニュースリリース(2025/8/26)
Impress Watch(現地取材記事)
MONOist解説記事

*2 出典
NTT研究開発「IOWN構想とは? その社会的背景と目的IOWN構想とは?
NTT 「IOWNってなぁに?

*3 目標値であり実測値保証ではありません。出典は、下記など。
NTT技術ジャーナル「「NTT IOWN Technology Report 2024」の公開について

*4 出典
NTTデータ「IOWNの何がすごい?技術的要素や活用例をわかりやすく解説!
NTTリリース「遠隔手術を支えるロボット操作・同一環境共有をIOWN APNで実証開始~100km以上離れた拠点間を同一手術室のようにする環境を実現~」(2022年11月15日)

*5 出典
NTT西日本ニュースリリース「IOWN APNによる遠隔データセンター間における処理配置最適化の実証実験に成功
~再生可能エネルギー積極利用によるカーボンニュートラルへの貢献~」(2025年6月11日)他

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