価値創造ストーリー / 有価証券報告書 / 統合報告書 / 開示媒体
昨日(4月9日)の日経イブニングスクープには、驚きました。
今年(2025年)夏にも、東京証券取引所が「IR体制の整備」を上場企業に義務付ける方針だとか。
ずいぶんな急展開ですね…!
さて。
IRの担当者や部署を設け、投資家との対話の機会を増やすように――。
このように聞くと、「また新しい業務が増えるの?」と、現場で報告書をつくっておられるご担当者さまは不安を感じるかもしれません。
でも私は、これは単なる“ルールの強化”ではなく、報告のあり方を見直すきっかけになるんじゃないかと思っています。本日はこのお話をいたしますね。
東証は以前から、PBR1倍割れの企業に対して「資本コストを意識した経営を」と呼びかけてきました。
また、金融庁も有価証券報告書の早期開示を促すなど、「タイムリーで信頼できる情報開示」の整備が進んでいます。
この流れの根底には、「企業の魅力が市場に伝わっていない」という問題意識があります。
どれだけ立派な報告書を作っていても、それが伝わる“設計”になっていなければ、投資家の理解にはつながらない。(※なお、ここで言う「報告書」には統合報告書だけでなく、有価証券報告書も含むと私は考えます。
だからこそ、東証は今回、「IR体制の整備」をルールに盛り込もうとしているのでしょう。
“作って出す”から、“対話を起こす”、そのために。
日本の統合報告書は、100ページを超えるものも少なくありません。
もちろん、それが悪いわけではありません。多くの担当者の方が、社内を巻き込みながら一生懸命仕上げていることを、私たちはよく知っています。
でも一方で、“語りすぎない”という選択も、対話のきっかけとしては有効です。
たとえば海外の大手企業のIRサイトを覗くと、資料は最小限。CEOやCFOのコメント、財務や非財務のKPIの一覧、ビジネスの概要。あとはIR担当の電話番号だけ、という例も珍しくありません。
それでも投資家との対話は成り立っています。むしろ、「詳しく聞きたければ直接どうぞ」というスタンスが信頼を生んでいるようにも見えます。
ちなみに、私が考える「ミニマムな統合報告書」の構成は、こんな感じです。
これで十分に、企業の考え方や方向性を伝えることができますし、必要な人は有報で深堀りできます。
大事なのは、「何をどこでどう伝えるか」という設計です。
報告書は、“情報の詰め合わせ”ではなく、“対話の入り口”であるべきなのだと思います。
IR体制を整えるという今回の東証の動きは、負担を増やすためではなく、企業と投資家の“目線のズレ”を減らすための一歩です。
だからこそ、IR部門だけでなく、経営企画、サステナビリティ、人事などの部門の方々が連携しながら、“企業価値を語るチーム”として報告に向き合っていくことが大切です。
「IR担当を置け」という指令の裏には、「きちんと向き合えば、きちんと伝わる」というメッセージがあるのかもしれません。
この変化を、“報告を見直す好機”として前向きにとらえてまいりましょう。
貴社の「伝わる報告書」づくりを、企画から伴走します。
IR体制の見直しや開示戦略の再構築に合わせて、統合報告書の簡素化・再設計をご検討の方は、ぜひ当社までご相談ください。
ーーー
本日もお読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。