今年1月のブログ記事でお伝えしたことが、どうやら現実になるようです。
カナダでは現地時間3月9日、与党・自由党の党首選挙で元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が勝利しました。辞任を表明していたジャスティン・トルドー首相の後任として、カーニー氏が次期首相に就任する見通しです。(出典:ブルームバーグ他)
サステナビリティ分野で活躍してきた人物が主要国のリーダーに就くらしい…ということで、このニュースはカナダのサステナビリティ政策にどのような影響があるのか、ちょっと調べてみました。
カーニー氏は金融界のスーパーエリートでありながら、サステナビリティ分野でも数々の実績を残しています。元カナダ銀行・イングランド銀行総裁という異色の経歴を持ち、2015年には「気候変動は金融システムの安定を損ない得る」と早くから警鐘を鳴らしました。
その後、金融安定理事会(FSB)ではTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の創設を主導し、企業に気候リスク開示を促す流れを世界に作りました。さらに、世界の金融機関による脱炭素連合GFANZでは共同議長を務めるなど、国際的なサステナイニシアチブの中心人物として活躍しています。
では、マーク・カーニー氏は、サステナビリティに関してどのような政策をとるのでしょうか。?
彼は、新たな気候政策として消費者向け炭素税の廃止を打ち出しています。カーニー氏は「炭素税は国民を分断している」と指摘し、ガソリンや暖房用燃料などに課されている現行の炭素税を撤廃する考えを示しています。
カーニー氏のキャンペーンサイトを見る限り、炭素税の負担を消費者から大企業(や大規模汚染者)へシフトしつつ、一般家庭のコスト軽減と経済成長の両立を図るのがカーニー氏の戦略であるようです。
一方で、彼が関与してきたTCFDやGFANZといった枠組みは形を変えながらも、カナダ国内の政策や金融業界の動向に確実に影響を与えています。国際的な同盟から一部銀行が離脱する事態は起きましたが、それでもカナダは自国の規制によって金融システム全体の低炭素化とリスク開示を進め、カーニー氏が描く「持続可能で強靭な経済」への道を追求しています。
気候変動対策は政治・経済において妥協の産物ではなく、イノベーションと協調によって成し遂げるものだというカーニー氏のスタンスが、カナダの政策に反映されていくのではないかと考えられます。
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また続報があればお知らせしますね。
それでは、次回のブログで!
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。