1月28日、埼玉県八潮市の交差点で道路陥没が発生し、トラックが転落するという事故が起きました。
埼玉 八潮 道路陥没トラック転落 車内に男性 救出は難航(NHK 首都圏NEWS WEB 2025年1月28日 14時50分)
トラックを運転されていた方が無事に救出されることを心から願っております。
事故の原因については現在調査中とのことですので確たることは申せませんが、埼玉県八潮市と聞くと、「地下水」と「地盤」が大きく関係しているのではという点が、個人的には気になります。
八潮市は埼玉県東部に位置し、利根川や荒川の流域に含まれる低地帯です。この地域は地下に砂やシルト層が多く含まれている軟弱地盤が多いため、地盤沈下の影響を受けやすい*1と言えます。
埼玉県の資料*1によれば、埼玉県内の地盤沈下量(累積)の上位10か所のひとつに八潮市八條(第9位)が入っています。 ここは中川沿いの地域で、場所によっては今回の陥没が起きた場所*2からあまり遠くない地点もあります。
(資料:埼玉県「令和4年地盤沈下調査結果について」)
埼玉県内では、地盤沈下を防ぐため、地下水の採取については「埼玉県生活環境保全条例」で規制されています。もちろん、八潮市もその例外ではありません*3。
ちなみに、このように地盤沈下の防止を目的として地下水の採取制限を行う自治体は、日本国内でも比較的多く存在します(都市化が進み、地下水の過剰採取による地盤沈下が深刻な影響を及ぼす地域に多い)。
こうした地下水採取制限は一定の効果をあげたとされていますが、新たな工場の建設などで地下水の需要が高まった場合、リスクは再び高まることとなります。
2024年8月に閣議決定された新たな「水循環基本計画」には、次のように書いてあります。
一般的に地下水の流動速度は非常に遅いため、地盤沈下、塩水化、地下水汚染などの地下水障害はその回復に極めて長期間を要する。特に地盤沈下は不可逆的な現象であるため、一旦発生すると回復が困難である。
これに先立つ2021年には、地下水の位置付けを明確にする法の改正が行われました。
この件について、「水循環基本計画」では次のように説明しています。
「地下水の適正な保全及び利用に関する施策」が含まれることが明示されるとともに、事業者はその施策に協力する責務を有し、国民はその施策に協力するよう努めることが示された。
また、国及び地方公共団体が講ずべき「基本的施策」に、「地下水の適正な保全及び利用」が追加され、地下水マネジメントの考え方を参考に、必要な措置を講ずべき旨の努力義務が、国及び地方公共団体に課されることになった。
企業様の「水」開示をお手伝いするために、もっと地下水や水循環について学ばなくては。その第一歩として「水循環基本計画」を改めて読み直そうと思った次第です。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 埼玉県「令和4年地盤沈下調査結果について」
*2 八潮市ホームページ「中央一丁目交差点で発生した道路の陥没について」(2025年1月28日)
*3 八潮市ホームページ「地下水採取に関する手続きについて」
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。