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先月末・1月30日に、「ダークパターン対策ガイドライン」ver1.0 が公表されました。
この件は企業様のウェブサイトの作り方に影響するもので、ひいてはサステナビリティ開示にも影響が及んでくる可能性が高いと考えられるため、ご紹介しておきたいと思います。
ウェブサイトなどの利用者を本来の意思に沿わない選択肢に誘導すること*1を「ダークパターン」と言い、近年、大きな問題となっています*2。
ダークパターンの例としては、たとえば次のようなものが挙げられます。
化粧品をキャンペーンで一回のみの購入で買ったつもりが、規約に小さな字で定期購入の記載があり、また解約そのものがしにくく、解約時には商品の金額から考えても不当に高い手数料がとられた
実際の在庫と全く連動せずに「残り在庫あとわずか」と表示
実際には常設のキャンペーンにも関わらずキャンペーンが後 2 時間と表示して消費者を焦らせる
解約手続き(どこで解約できるか等)の案内が不親切・わかりにくい
※ダークパターン対策ガイドライン」ver1.0より筆者作成
きっと皆さまもどこかで目にしたことがある、あるいは体験したことがあるかもしれないこういった手法によって、日本全体での年間約 1 兆 575 億円~約 1 兆 6,760 億円の被害*3が出ているとの推計もあります。
こうした状況を危惧し、昨年(2024年)に、日本に一般社団法人ダークパターン対策協会が設立されました。
2024年10月時点の新聞記事では
25年1月中旬をめどに非ダークパターン認定のガイドラインを公開し、同年7月1日から認定制度を始める。協会に入らなくても制度に申し込める。認定された企業にはウェブサイトに掲出できる改ざん不可能なロゴマークを提供するという。認定企業でダークパターンを見つけた場合、外部から通報できる窓口も設ける。
と報じられていましたが、記事どおりにこのたび、「ガイドライン」が公開されました。
ということは、7月からの「認定制度」開始も予定通り…ということかもしれません。
ここまでお読みになったかたの中には、「ウェブサイト、しかも営業用(消費者向け)のウェブサイトなんてサステナビリティ担当者である自分の業務の範疇ではないから関係ない」と思ったかたもいらっしゃるかと思います。
ですが、個人的には今回の話、多くの企業様にとって「他人事」ではないと考えます。
理由のひとつは、このガイドラインを使って行われる認定制度は、「問題のある」サイトではなく、「問題のない」サイトを認定するものであるためです。(正確には、「非ダークパターン認定(NDD 認定)」)
このため、多くの企業でこのガイドラインに沿ったウェブサイトの改訂が行われ、サステナビリティの文脈でも「認定を受けていますよ」という開示が必要になると考えられます。
* * *
二つ目の理由は、ガイドラインの構成の一部が(GRIやESRSを意識してでもいるかのように)サステナビリティ的な書き方になっているためです。
ガイドラインの目次「5.3 組織的対策」は、次のようになっています。
5.3.1 責任対象と管掌役員等の任命【審査対象】
5.3.2 問合せ窓口設置・窓口公開【審査対象】
5.3.3 設計時・実装後リリース前の担当者以外(設計者・実装者以外)によるレビュープロセスの実装【審査対象】
5.3.4 担当者以外によるレビュー体制の確保【審査対象】
5.3.5 担当者以外によるレビュールール(規程)の設定【審査対象】
5.3.6 ダークパターンの自主的な是正【審査対象】
5.3.7 ダークパターン被害の補償【強く推奨】
5.3.8 消費者との協力的な戦略の行動規範などへの取り込みと全社教育【審査対象】
5.3.9 消費者との対話(消費者レビュー)の実施【強く推奨】
……いかがでしょう?
ガバナンスにレビュー、対話にグリーバンスメカニズムと、いかにもサステナビリティ!という感じではないでしょうか。
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ともあれこのガイドライン、3月5日までパブリックコメント募集中ですので、一度お目通しいただくことをおすすめいたします。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 正確な定義はさまざまありますが、ここでは簡易的に、日経電子版『悪質誘導「ダークパターン」対策、協会が優良企業を認定』(2024年10月2日)の表現を用いました。
*2 このブログ記事内では(話をわかりやすくするために)言及しておりませんが、米国や欧州ではダークパターンの規制が進んでいます。詳しくは、下記資料などをご参照ください。
*3 推計の詳細については、「ダークパターン対策ガイドライン Ver1.0」に記載されています。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。