本日は、クリスマスイブ。クリスマスケーキの販売・受取のピークも本日とあって、近所のケーキ屋さんも朝から忙しそうに働いておられます(お疲れ様です…!)
クリスマスケーキといえば、イチゴのショートケーキ!と思われるかたは多いですよね*1。私もそのひとりなのですが…今年(2024年)に限っては、イチゴをみると、あることが気がかりになり、ついついそわそわしてしまうのです。
私が気になっているのは、熊本のイチゴ栽培の話です。
国内のイチゴ産地といえば、栃木県(生産量全国第1位)・福岡県(同2位)に次ぐ生産量を誇るのが、熊本県。
そして熊本といえば、2024年の大ニュースは、熊本県菊陽町に建設が進んでいた台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第1工場始動 です。
地元経済や雇用への貢献期待も大きいとあって、すでに第2工場建設が決定し、第3工場の誘致も進んでいる*2という大歓迎ムードですが…地下水を大量に使用することが前提の半導体工場*3は、農業との水資源競合が懸念されているのです。
もちろんこれは、イチゴ農家にとってもひとごとではありません。
私は最近、イチゴを見かけるとこの件が気になって仕方がないのです…。
工場が地下水を大量使用することにより、確保に不安が出てくるのは農業用水だけではありません。
熊本県は全国的にも地下水への依存が高い地域であり、水道水も地下水が主流となっています(水道水源の約80%を地下水に依存しています)。とりわけ熊本市は、ほぼ100%を地下水でまかなっている全国でも稀な地域なのだそうです*4。
豊富な地下水がこの地域の生活から農業・工業まで、すべてを支えているのですね。
こうした中、 TSMCによる大量の地下水使用は、農業用水や生活用水の確保が難しくするのではないかという懸念が地域住民や農業従事者の間で今、高まっています。地下水位の低下は、農作物の生育や地域の生態系にも影響を及ぼす可能性があります*5。
もちろん自治体やTSMCも、この件に関して何も対策をしていないわけではありません。
熊本県や菊陽町では、地下水涵養事業を推進し、農業用水を地中に浸透させる取り組みを行っています。TSMCも地下水の使用量削減や水再生処理システムの導入を検討しています。これらの対策により、地下水資源の保全と持続可能な利用を目指しています*6。
ですが、地下水涵養策が本当に効果的かつ十分なものと言えるのかや、地域との話し合いや連携は十分なのか、農地転用の妥当性はどうなのか…などなど、TSMCの工場進出をめぐる熊本の状況には、最新のサステナビリティ課題を考えるきっかけになるテーマが詰まっています。
…なんてことを考えすぎてしまうと今夜のクリスマスケーキは食べづらくなってしまいそうですが…食品ロスもいけないので、ちゃんと食べようと思います。
地下水涵養の話はまた別の機会に続きを書きますね!
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
脚注
*1 なぜクリスマスにはイチゴのショートケーキなのか?についてはITmedia ビジネスオンラインの記事「なぜクリスマスに「苺と生クリームのケーキ」を食べるようになったのか」が詳しいので、よろしければご参照ください。
*2 出典:日経電子版「熊本県知事、訪台でTSMC第3工場誘致へ 26日に本社で」(2024年8月8日)
*3 TSMCの第1工場では、1日約1万2,000立方メートルの地下水を使用する計画で、これは、単純計算で菊陽町の全人口が家庭で消費する量を2~3割上回る規模なのだそうです(出典:読売新聞オンライン記事)。さらに、第2工場の建設も進められており、両工場合わせて年間約830万トンの地下水を使用する見込みです。
*4 熊本県ホームページ「熊本県内の地下水位・地下水採取状況」(2024年11月13日更新)
*5 参考:朝日新聞デジタル『半導体巨大工場が使う水「ほぼ町一つ分」 募る「地下水枯渇」の不安』(2024年11月3日)
*6 参考:くまもと県民テレビ「TSMC進出の裏で減り行く畑と水…農業・環境は守られるのか?」(2024年2月23日)
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。