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【ニュース走り書き】ホンダ・日産 経営統合へ:
新会社のEV戦略とEUバッテリー規制対応はどうなるのか?

ニュース / 脱炭素

12月18日・今朝は、ホンダと日産が経営統合に向けた協議を開始したとのニュースで持ち切りですね。

※NHKの下記ページは現在、リアルタイムで更新中とのことです。

ホンダと日産が経営統合に向け協議【詳しい解説も】

 

両社の統合は、世界のEV市場にどのような影響を与え、厳しいEUバッテリー規制にどう対応していくのでしょうか?

今回のブログでは、統合後の新会社が取り組むEV戦略とバッテリー規制対応について予想するとともに、EV市場の主導者であるテスラの動向と、その背景にあるアメリカ政治の影響についても(あくまで私見ですが…)考えてみたいと思います。

 

統合検討の背景:EV市場の競争激化と規制強化

EV市場の競争激化

世界的にEV市場が拡大する一方、中国のBYDや米国のテスラが市場をリードし、日本メーカーは競争力強化が急務です。特に、日産とホンダは中国市場でのシェア低下に直面しています。

EUバッテリー規制の強化

EUの厳しい規制への対応は、多額の投資や技術革新が必要です。単独企業では対応が難しい状況が統合の背景にあります。

テスラの優位性とアメリカ市場の動向

世界のEV市場で先行するテスラは、コスト効率の高いバッテリー技術と巨大な生産能力を武器に、グローバル市場を席巻しています。
しかし、アメリカでは2024年の大統領選挙でトランプ氏が次期大統領となることで、その影響がテスラとEV市場全体に波及することも予想されます。

 

テスラとトランプ氏の関係:バッテリー規制への影響

① トランプ次期大統領の政策方針

トランプ氏はこれまでの発言や政策から、気候変動対策や環境規制の緩和に対して消極的な姿勢を示してきました。具体的には:

  • 環境規制の緩和:EPA(環境保護庁)の規制強化を抑え、バッテリー製造時の排出管理に対する基準を緩める可能性もあります。
  • 化石燃料産業の保護:石油・ガス業界を優遇し、再生可能エネルギー分野への支援を縮小する可能性も指摘されています。

これらは、アメリカ国内でのEV普及や環境配慮型バッテリー開発へのインセンティブを弱める可能性があると考えます。

② イーロン・マスク氏とトランプ氏の関係

テスラCEOのイーロン・マスク氏は、トランプ氏との関係を築いているとされ、特に以下の影響が考えられます:

  • バッテリー製造の優遇:トランプ政権下で国内生産が奨励され、テスラの「ギガファクトリー」が税制優遇や支援を受ける可能性があると考えます。
  • 規制緩和の恩恵:アメリカ国内のバッテリー製造時の環境規制が緩和されれば、テスラはコストを抑えつつ生産能力を高めることが可能になります。

 

ただし、これらはEUが求める「持続可能なバッテリー規制」の基準とは逆行する動きであり、結果としてテスラの対応がグローバル市場で二分されることになるのでは?とも考えております…。

 

ホンダ・日産の統合後EV戦略:想定されるテスラの方向性を踏まえて

① EUバッテリー規制対応での差別化

ホンダと日産が統合する場合、EUの厳しい規制に対応する持続可能なバッテリー技術と低炭素生産体制を確立することが急務となるでしょう。

ここでもしも、テスラがアメリカ市場向けにおける規制緩和を追い風とするのならば、(それはEUが求める基準とは逆行していますので)、新会社は「欧州市場でのリーダーシップ」を狙う戦略が有効となるでしょう。

② テスラの低コスト戦略への対抗

テスラがアメリカ市場でコスト優位性を発揮するのであれば、ホンダ・日産は規制対応を前提とした高品質で環境負荷の低いバッテリーを武器に競争力を高める戦略をとることになるのではないでしょうか。

③ グローバルサプライチェーンの強化

テスラが米国内でサプライチェーンを最適化するのであれば、ホンダと日産はEU・アジア市場でのサステナブルなサプライチェーン強化に注力し、グローバル市場での地位を確保する戦略が求められることになるしょう。

 

新会社の強み

1.EV戦略に関して
① 統一プラットフォームの導入

統合後、新会社はEVのプラットフォームを共有することで、開発・生産コストを大幅に削減できると考えられます。

  • 日産のEVプラットフォーム:「リーフ」で培った先進的なEV技術
  • ホンダのモジュール技術:多様なバッテリー搭載を可能にする設計
② 次世代バッテリー技術の共同開発

新会社は、次世代の全固体電池や高効率リチウムイオン電池の開発を加速するでしょう。

日産のバッテリー生産技術とホンダの研究開発力を統合することで、2028年頃の実用化が現実味を帯びてきます。耐久性やCO₂排出量削減というEU規制基準もクリアしやすくなるのではと期待しています。

 

2.EUバッテリー規制対応に関して

統合が実現した場合、EUバッテリー規制への対応力が大幅に強化されるのではと考えております。

① 低炭素サプライチェーンの最適化
  • 両社の既存のバッテリー工場(例:日産の英国サンダーランド工場)を活用し、再生可能エネルギーを導入することで製造段階のCO₂排出削減が可能になります。
  • 原材料調達についても、サプライチェーンの統合によりトレーサビリティ強化が可能となります。
② リサイクル技術の共有
  • 日産のSecond Lifeプロジェクト(バッテリー再利用)と、ホンダのリサイクル技術を組み合わせることで、EU規制の「材料再利用率」を効率的に達成できます。
  • 使用済みバッテリーを再利用することで、原材料コストの削減にもつながります。
③規制対応コストの削減

やはりここは大きいと思います。統合によって、EUバッテリー規制への対応コスト(例:リサイクル体制の構築、CO₂排出管理)の負担を分散できるのは大きな強みとなるのではないでしょうか。

 

統合によるグローバル対応力強化を期待

トランプ次期大統領の政策がEV市場に混乱をもたらす可能性がある一方で、ホンダと日産の統合はEUバッテリー規制対応を軸にした強固な戦略を構築する契機となりえると考えます。

統合後の新会社は「サステナビリティ」と「技術革新」を武器に、欧州およびアジア市場での優位性を確立することを期待しております。

本日もお読みいただきありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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