サーキュラーエコノミー / 勉強用(初学者様向け) / 気候変動
このところ、韓国関連の報道が気になってそわそわしてしまいますが…
心を落ち着けて、本日もブログを書いていきたいと思います。
日経ESGの記事「ESGこそ競争力、救済だけではない WBCSDのバッカーCEOに聞く」を読みました。
WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のピーター・バッカーCEOは、この記事のなかで「世界の排出削減の40~45%は資源循環で実現すべきだ」と述べ、次のように続けています。
我々の分析では、企業がGCPを使うと、使わない場合に比べて6年早くサプライチェーンを脱炭素化できるという結果が得られた。企業がGCPを使ってサプライチェーンの資源循環を測定・管理すれば、大幅な排出削減を実現できるだろう。GHGプロトコルが企業の脱炭素化に及ぼしたのと同等の影響をGCPにも期待している。
…と、ここまで読んだとき、私は、そういえばこのブログではまだ「グローバル循環プロトコル(GCP)」についてご紹介したことはなかったな…ということに気づきました。
そこで本日は、GCPについて書いてみたいと思います。
グローバル循環プロトコル(以下、GCP)は、循環経済の取り組みを促進するための国際的なイニシアチブです。2022年のストックホルム+50で提言され、WBCSD及びOne Planet Network (OPN)がリードしています。
企業さまにとって、特にご関心が高いのは、GCPが「循環性を評価するための指標や目標」を開発*1しているところではないでしょうか。
これまで企業が自社の循環性を測定・管理するための指標がなかった。そこで、新たな枠組みとして「グローバル循環プロトコル(GCP)」を開発している。
(出典:日経ESG「ESGこそ競争力、救済だけではない WBCSDのバッカーCEOに聞く」)
循環性を数値化・評価する枠組みを構築し、これを通じて、資源の最適利用、廃棄物削減、製品ライフサイクルの拡大など、循環経済に向けた幅広い取り組みをサポートしていくのがGCPのねらいです。
2024年9月に、WBCSDは、GCPを採用した時の効果についての分析結果を公表しました。
そこでは、主な調査結果として、下記の4点が示されていました。
Circular business practices: Adoption of the GCP is expected to be a catalyst for rapid advancement in circular maturity, with the potential to double the pace at which business circularity matures.
(資源循環型ビジネス・プラクティス:GCPの採用は、資源循環型社会の実現を急速に推進する起爆剤となり、その成熟度を倍増させる可能性がある)
Material consumption: The GCP has the potential to reduce global material consumption by 4% to 5% between 2026 to 2050. Additional cumulative material savings in this period are 100 to 120 billion tons and are equivalent to the amount of material consumed currently per year.
(材料消費:GCPの採用により、2026年から2050年の間に世界全体の材料消費を4%から5%削減できる可能性がある。この期間における追加的な累積物質節約量は1000億トンから1200億トンであり、これは現在1年間に消費される物質量に相当する)
Climate impact: The adoption of the GCP could lead to an additional reduction of GHG emissions between 6% to 7% over the period 2026-2050, equivalent to 67 to 76 gigatons of cumulative CO2eq savings. In comparison, this is between 1.3 and 1.5 times current annual global emissions. This is equal to 12 times the current annual emissions of the US or 5 times the annual emissions of China.
(気候変動へのインパクト:GCPの採用により、2026年から2050年の間にGHG排出量をさらに6%から7%、累積CO2eq削減量に換算すると67から76ギガトン削減できる可能性がある。これは現在の年間世界排出量換算では1.3倍から1.5倍、米国の年間排出量の12倍、中国の年間排出量の5倍に相当する数値である)
Nature conservation: Significant environmental benefits include an additional decrease of air pollution (PM2.5), on average by 11% to 12% per year, between 2026 and 2050.
(自然保護:環境面での顕著な効果として、2026年から2050年の間に、大気汚染(PM2.5)がさらに平均で年間11%から12%減少することが見込まれる)
気候変動へのインパクトだけを見ても非常に大きいですね…。
GCPは、2025年のCOP30までに最初のプロトコル版を完成させることを目指しています。
日本においても環境省がWBCSDと協力を進めて*2おり、来年度(令和7年度)予算にも「企業の循環性情報開示スキーム及び循環性指標の整備等」という名目での概算要求が出ています。
(事業イメージ図は下記の通りです)
このように環境省も力を入れている以上、企業様への影響も、早ければ来年、遅くとも再来年には出てきそうに思われます。
引き続き「GCP(グローバル循環プロトコル)」に注目していきたいと思います。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 開発されている指標がどのようなものであるのかについては、三菱UFJリサーチ&コンサルティングさんのコラム「サーキュラーエコノミー移行を通じた企業のビジネスモデル変革 ~ISO 59000シリーズ、GCPへの対応~」(2024年11月13日)がわかりやすいと思います。
*2 ご参考:環境省報道発表資料「WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)とのGCP(グローバル循環プロトコル)に関する協力について」(2024年3月1日)
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。