勉強用(初学者様向け) / 生物多様性 / 脱炭素
地球温暖化が進む中、「藻場(もば)」と「ブルーカーボン」は、地球環境を守る鍵として注目されています。
藻場はCO₂を吸収し、海洋生態系を支える重要な存在ですが、近年、その減少が深刻な問題となっているそうです。そこで本日のブログでは、最新の研究を交えながら、藻場再生の課題と解決のための取り組みについてお伝えしてみたいと思います。
「ブルーカーボン」とは、大気中の二酸化炭素(CO2)が海洋生態系に吸収され、長期間にわたって海洋内に貯留される炭素のことを指します*1。
陸上の森林(グリーンカーボン)と比較したときのブルーカーボンの強みは、そのスピードと効率です。特に藻場やマングローブ、塩性湿地などは炭素吸収量が多く、気候変動対策として非常に効果的とされています。また、これらの生態系は、一度固定した炭素を長期間にわたり蓄える力もあります。
しかし、藻場は水質汚染や磯焼け(藻場の劣化)などで世界中で減少が続いており、保全と再生が喫緊の課題となっています。
藻場再生には多くの課題があります。例えば、「どこに藻場を再生すべきか」という基本的な情報が不足していることも大きな問題です。また、気候変動や沿岸開発、人為的な影響で減少した藻場を復元するには、コストや技術的なハードルが高いのが現状です。
そんな中、ウミガメの追跡調査が藻場再生の課題を解決する新たな手法となるのかも…?という研究がされたことを、こちらの記事で読みました。 ↓↓
Green turtle tracking leads the discovery of seagrass blue carbon resources
上記の研究(Mann et al.,2024)では、ウミガメの行動追跡を通じて、藻場の分布や炭素固定能力が新たに解明されました。ウミガメは藻場を餌場として利用するため、彼らの移動データを解析することで、従来の調査では見逃されていた藻場の位置や規模を特定できることが分かったのだそうです。
このアプローチは、藻場再生プロジェクトの適切な場所選びに活用できるだけでなく、炭素固定能力の高い藻場の特定にも役立ちます。ウミガメの行動データが藻場再生の指針となることで、これまで以上に効率的な再生活動も期待できるかもしれませんね。
ブルーカーボンは、温暖化対策や生物多様性の保全だけでなく、カーボンオフセット市場や企業のサステナビリティ戦略にも深くかかわるものであり、その鍵となる「藻場の再生」には、今、国や自治体はもちろん、企業もさまざまな取り組みをしています。
ここ数か月の日経電子版記事を検索しただけでも下記が見つかりました:
今後も、「藻場再生」というキーワードに注目していきたいと思います。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 出典:産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)マガジン「ブルーカーボンとは?」
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。