気になっていた「ジョブ型」について考え始めることにしました
今年8月に内閣官房から「ジョブ型人事指針」が発表されて以来、このテーマ、ずっと気になってはいたのですが…なかなか時間をとって調べたり考えたりすることができずにおりました。
ですが、今月に入ってから、ジョブ型もしくはこれに関連しそうなニュースを見ることが増えてきましたので、そろそろちゃんと考えてみようと思うに至り、本日のブログを書いています。
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手始めに「ジョブ型」の利点と課題を考えてみることにします
まだまだ勉強を始めたばかりですので、色々とツッコミどころばかりだと思いますし、サステナビリティというよりIR的な視点に偏ってしまっているところがあるかもしれませんが… まずは頭の中のもやもやを整理する意味で、いったん書き出してみますね。
利点(Pros)
1.人材活用の効率化
- 適材適所の配置:職務記述書(ジョブディスクリプション)を活用することで、各部署が求める能力や経験に合致した人材を社内からスカウトでき、組織全体の生産性向上が期待される
- 人材の流動性向上:社内スカウト制度により、従業員が自らのキャリアパスを柔軟に選択できる環境が整い、組織内での人材の最適配置が促進される
2.キャリア形成の透明性向上
- 明確なキャリアパス:職務記述書の明確化により、従業員は自身のスキルと職務要件のギャップを把握しやすくなり、キャリア形成の指針とすることができる
- 評価基準の明確化:成果やスキルに基づく評価が可能となり、公平な評価制度の構築が促進される
3.多様性と柔軟性の向上
- 多様な人材の活躍:スキル重視の採用により、年齢や性別、国籍に関係なく多様な人材が活躍できる環境が整う
- 柔軟な働き方の推進:リモートワークやフリーランスなど、多様な働き方との親和性が高まり、働き手に選ばれる企業となる可能性がある
4.労働生産性の向上
- 労働生産性の向上:適切な人材配置と評価制度により、労働生産性の向上が期待され、企業の長期的な競争力強化につながる
- 効率的なリソース配分:職務基準の明確化により、リソースの最適配分が可能となり、経済的な持続可能性に寄与する
課題(Cons)
1.硬直化のリスク
- 柔軟性の低下:職務内容が固定化されることで、変化の多い市場環境に迅速に対応しづらくなる可能性がある
- 業務範囲の制限:ジョブ型のルールが厳格すぎる場合、業務範囲外の柔軟な対応が難しくなることがある
2.従業員間の連携の低下
- 部門間の連携不足:明確な職務分担が、職種間の連携不足や「それは自分の仕事ではない」という態度を助長する可能性がある
- イノベーションの阻害:部門横断的な協力が必要なイノベーションが起こりにくくなる恐れがある
3.従業員の安定性への影響
- 雇用の不安定化:職務内容が詳細に規定されることで、一部の従業員が「契約に合致しない」と評価され、キャリアの安定性を失うリスクがある
- 適応の難しさ:特に雇用の柔軟性が高い国では、ジョブ型雇用の形態が労働者にとっての不安定要因となる場合がある
4.導入コストの増加
- 初期投資の必要性:ジョブディスクリプションの策定、スキルの評価基準の設定、従業員のトレーニングなど、ジョブ型雇用に移行するためには初期コストがかかる
- 管理負担の増大:制度が複雑になることで、人事管理の負担が増大する可能性がある
5.日本の企業文化とのギャップ
- 文化的適応の難しさ:日本ではメンバーシップ型雇用が主流であり、従業員がジョブ型に適応するには文化的な障壁が存在する
- 従業員の意識改革の必要性:従業員が「何でも屋」を求められる風潮が根強い場合、ジョブ型の適用が難航する可能性がある
6.労使間のコミュニケーション課題
- 労使協議の必要性:ジョブ型人事制度の導入には、労働組合や従業員との十分な協議が必要であり、合意形成に時間を要する場合がある
- 従業員の理解促進:新制度への移行に際し、従業員の理解と納得を得るためのコミュニケーションが不可欠
7.降格と賃金低下に関する課題
- 降格の増加:ジョブ型人事制度の導入により、目標と実績の乖離が大きい場合に降格が発生しやすくなる可能性あり。このような変動は、従業員に緊張感をもたらす一方で、降格による意欲低下のリスクを伴う
- 賃金の不利益変更:日本の従来型雇用慣行(職能資格制度)では、基本給が事実上の既得権として守られてきたため、賃金低下を伴う降格が労働紛争に発展するリスクがある
- 訴訟リスクの増大:従業員が降格を理由に訴訟を起こす場合、裁判所が「賃金の不利益変更」と判断する可能性があるため、企業は降格の理由や手続きの適正性を十分に確保する必要がある
ジョブ型人事のメリット、デメリットは
ジョブ型人事制度は、スキルベースの人材活用を推進し、組織の競争力向上に寄与する一方で、従業員の降格や賃金低下をめぐる課題が新たに浮上しています。
企業には、透明性のある評価基準や改善プログラムの導入、労使間の十分な協議を通じて、従業員の納得感を高める取り組みが求められます。また、制度の運用に際しては、労働法上のリスクを十分に認識し、慎重な対応が必要です。
次回は、こうした仮説をもった上で、企業様が実際にどのような形でジョブ型人事を採り入れ、サステナビリティレポートにはどのように書いておられるのかを調べてみたいと思います。
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本日も、お読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子