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2025年、GRIでは「気候変動」と「労働」の動きに要注目です

開示基準等

JICPA & SSBJ 共催でGRIのセミナーが開催されました

本日(11月13日)、「企業報告の進化とGRIの役割」というセミナーが開催されました。

このセミナーは、

  • グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)/グローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)
  • 日本公認会計士協会(JICPA)
  • サステナビリティ基準委員会(SSBJ)/公益財団法人財務会計基準機構(FASF)

 

の共催によるものです。

私も参加したかったのですが、手元の仕事の関係で出席できず… でも、せっかくなので当日の資料「【講演資料】サステナビリティ報告、GRI及びGRIスタンダード」を読んでみましたところ、新たな発見がありましたので、取り急ぎ皆さまにご報告いたします。

 

追記:
このセミナー、後日アーカイブ配信があるそうです!(個人的にホッとしました…)

 

生物多様性は公表済み。TNFDとの相互運用性を確保

資料の47ページに、開発中の項目別スタンダードが一覧になっていました。
(以下、画像の出典は「【講演資料】サステナビリティ報告、GRI及びGRIスタンダード」)

1行目の「生物多様性」はすでに、「GRI101:生物多様性2024」として公表されています。

これは「GRI304:生物多様性2016」の改訂版にあたるものです。適用開始は2026年1月1日以降に発行するレポートからですが、早期適用も推奨されています。なお、2024年7月にはTNFDとの「相互運用性マッピング(interoperability mapping)」も発表されました*1

「気候変動」は2025年4月以降に公表/ROの見込み

今後の予定として、次に来るのは「気候変動」です。
年明けの4月以降に公表およびロールアウトとのことで、間もなくですね。

 

GRIの「気候変動」改訂は、以下を範囲としています。

  • GRI 305:大気への排出 2016(開示事項305-1から305-5)
  • GRI 302:エネルギー 2016
  •  GRI 201:経済パフォーマンス 2016(開示事項201-2:気候変動による財務上の影響、その他のリスクと機会)
  • 新たな主題を含む(移行計画、カーボン・クレジット、排出目標、公正な移行)

 

内容は、新しいものが多そうですね↓↓

新スタンダードは(もちろん)ISSBおよびESRSとの間では整合性とインターオペラビリティの確保に注力するようですが、それ以外にも、CDPやWBA、TCFD、SBTiなど多方面で「整合のために努力」されているようです。

 

 

「労働」は3セットに分かれてプロジェクトが進む

「労働」は、以下の3つのセットに分かれて検討が進んでいます。

 

セット1: 雇用実務及び条件

  • 雇用の項目別スタンダード
  • 報酬及び労働時間の項目別スタンダード
  • 労働者の項目別スタンダードについて大きな変更
  • GRI 2に対する、労働管理のスタンダードの解釈

 

セット2: 仕事を持つ生活及びキャリア開発

  • 研修と教育の項目別スタンダード
  • 働く親及び介護者の項目別スタンダード
  • ダイバーシティ、インクルージョン及び機会均等の項目別スタンダード

 

セット3: 労働者の権利及び保護

  • 児童労働の項目別スタンダード
  • 現代奴隷及び強制労働の項目別スタンダード
  • 非差別の項目別スタンダード
  • 結社の自由と団体交渉の項目別スタンダード
  • 取引関係における労働者の項目別スタンダード

 

セット1は、2025年第2四半期に最終承認の見込みであるほか、セット2と3についても、2025年中に公開協議機関が設定されているなど、こちらもまもなく…というところのようです。

 

 

ISSBのS3以降はまだまだ先であることを鑑みると、「労働」に関するGRIの2025年の動きは注目すべきものになりそうです。

 

引き続き動向を追っていきたいと思います。

 

それではまた、次回のブログで!

執筆担当:川上 佳子


*1  TNFDとの整合性のポイントは下記の通りです。(出典:国際開発センター SDGs室「【News】GRIとTNFDが生物多様性報告を容易にする」)

  • 生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)により定義された、自然と生物多様性損失の5つの直接的要因を含む、一貫した自然関連の概念と定義の使用。
  • TNFDのマテリアリティに対する柔軟なアプローチに従い、TNFD提言及びガイダンスにおいて、インパクトに焦点を当てたGRIのマテリアリティ・アプローチを表示し取り入れた。TNFD LEAPアプローチは、組織がインパクトと財務の両方のマテリアリティに沿って報告することを支援するよう設計されている。
  • GRI 101: 生物多様性2024の開示事項はすべてTNFD勧告に反映されている。TNFD勧告は、例外とする自然関連のリスクと機会の特定と評価を除き、すべてGRIスタンダードに反映されている。
  • TNFDの中核となるグローバルな開示事項とGRIスタンダードの関連する開示事項との間に強い整合性がある。TNFD セクター評価指標と関連するGRIセクター別スタンダードの最初のマッピングも、このレベルでの整合性を強調している。
  • TNFDのLEAPアプローチ(自然関連の課題を特定し評価するためのガイダンス)は、GRI 101で表示されている。これは、生物多様性に対する最も著しいインパクトが存在する可能性が高い場所を特定し、自然の状態の変化を測定するためのガイダンスを提供するものである。
  • GRI 101は、生態学的に影響を受けやすい地域やその近傍にある組織の立地を検討する際に、TNFDの定義と基準を用いている。
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