11月8日、金融庁のホームページに、「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」が掲載されました。
今回公開されたのは、今年9月11日に開催された「第1回勉強会」での議論を踏まえた内容ですので、項目としては
となっています。
2024版の「投資家・アナリスト・有識者が期待する」内容を見てまっさきに感じたのは、経営陣がサステナビリティ開示において果たす役割への期待がより踏み込んだものになったな…ということです。
開示検討の初期段階からCEOやCFO、経理部等が連携し、開示に関する取組みを推進することが充実
した開示を行うにあたり重要
(好事例集2024(第1弾)「投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み」より。太線部分は原文通り)
サステナビリティ開示は中長期の経営戦略であることから、経営陣やガバナンスによるリーダーシップの発揮、経営者の意思表示、経営陣の意向を示すことが重要。具体的には、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」のセクションと、「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションが連携することが挙げられる
(好事例集2024(第1弾)「投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント:全般」より。太線部分は原文通り)
単に「コミット」するだけでなく、
- 開示の初期段階から連携し、
- リーダーシップを発揮し、
- 意向を示す
ことが求められているのですね。
このあたりの記述、2023年版ではこんな感じでした↓↓
開示の進展のためには、経営陣や取締役会、監査役会等からのコミットが必要
有価証券報告書の作成においては、本社部門だけではなく、各部門のトップ層や、現場も関与すること
が重要
開示の改善や施策の継続には、経営陣からの強いコミットメント及び適切なリソース配分が必要
(好事例集2023「投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント:全般」より。太線部分は原文通り)
2023の表現は
- コミット
- 関与
- リソース配分
と、2024に比べれば「一歩引いた」表現になっていることがわかります。
2024の好事例を見る限り、この部分の変化は単なる「言葉上のもの」ではなく、実質としてのトップの関わり(トップの巻き込みを含む)が求められているように見えますので、なかなか大変だなぁ…と思った次第です。
ちなみに。
今回のブログタイトルからは少し離れるのですが、有報・好事例集2024を前年版と比較した時、もうひとつ気になったのは「統合報告書等との棲み分け」という項目がなくなっていたことでした。
2023版↓↓
2024版↓↓
このように、「統合報告書等との棲み分け」が「開示をするに当たっての工夫」になっているんですね。
いよいよ、有価証券報告書を「メインレポート」と位置づけて、ストーリー的な内容まで含めて開示されることを期待する流れになってきているように、私には感じられました。
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ともあれ。
今回の好事例からもしっかり学んでいきたいと思います。
本日もお読みいただきありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。