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「ダメ開示」とはあんまりな言い方ですが…
東証PBR改革は次のステージに入ったようです

コーポレート・ガバナンス / 勉強用(初学者様向け)

昨日(10月31日)、東京証券取引所「市場区分の⾒直しに関するフォローアップ会議 第18回」が開催されたました。

これに先立つ形で公開された資料の一部が、界隈でちょっと話題になっていましたので、背景を含めてご紹介しておきますね。

 

「資本コストや株価を意識した経営」を推進している会議

まず、そもそもこの「市場区分の⾒直しに関するフォローアップ会議」とは何なのかと申しますと:

 

  • 東証は、2022年4月4日に市場区分を再編しました。この目的は、「上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多様な投資者から高い支持を得られる魅力的な現物市場を提供すること」*1 にありました。
  • この市場区分見直しの実効性を高めるために設けられた有識者会議が、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」です。フォローアップ会議では、現状評価と追加的な対応が議論されてきました。

 

では、この会議ではどのようなことが話し合われてきたのかと申しますと:

 

  • 「市場区分見直しの実効性を高める」ための具体策が、「資本コストや株価に対する意識改革・リテラシー向上」や「コーポレート・ガバナンスの質の向上」「英文開示の更なる拡充」「投資者との対話の実効性向上」などです。
  • なかでも「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」については、東証が力を入れている取り組みです。
  • とはいえ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」は、あくまで企業が自主的に取り組むことが重要です。そこで東証では、企業の開示を一覧で示すとともに、「好事例」を定期的に採りあげることでその浸透を図ってきました。

 

真摯な取り組みと表面的な取り組みの二極化が指摘された

取り組みの開始から約1年が経った、今年(2024年)8月。東証は、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の現状と、今後の対応策を発表しました。

 

その中で指摘されていたのは、企業の対応の「二極化」です。

 

(出典:東京証券取引所 上場部 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する現状と今後の東証の施策(案)について」(2024年8月19日)p.13

 

この図では3種類に分かれているものの、投資家からは

真摯に取り組む企業と表面的に取り組む企業の二極化が進んでいる(海外投資家)

真摯に取り組むものの投資者からの注目が集まらない企業が多くいる一方で、形式的に取り組むだけの企業もいる。そのような企業は開示していない(企業群③)のと変わらない(海外投資家)

との指摘がありました。

 

そしてその中で、「企業群②」へのアプローチを強化すべきとの意見*2があり、アプローチの具体策として

好事例だけでは、自社はそこまで立派な企業ではないのでと開き直ってしまう企業がいるため弱い。
この取組み・開示では投資者の期待に応えられていないという好ましくない事例を示していくことが有効
(海外投資家)

との意見があがったのです。

 

「好ましくない事例」の紹介が始まった

このような背景のもと、

冒頭でご紹介した10月31日の「市場区分の⾒直しに関するフォローアップ会議 第18回」では、このような資料が提出されました。

 

 

これらの中で、界隈で話題になっていたのは、資料4「投資者の目線とギャップのあるポイントと事例(案)」でした。

この資料は、現段階(11月1日時点)ではドラフトで、2024年11月中旬を目途に確定版となるとのことですが…

中を見てみますと:

 

こんな感じで、結構辛らつです。
「好ましくない事例」の提示がはじまる、ということですね。

 

この資料開示を受けてか、日経電子版はいち早く「PBR改革、次は「ダメ開示」 投資家の期待と目線合わせ」との記事を載せていました。

「ダメ開示」とはあんまりな言い方ではありますが、好事例だけでなく、要改善事例も出していくことは(厳しい指摘ではありますが)、開示のお手伝いをしている身としては勉強になります。

 

この資料とあわせて、11月中旬には『投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例(案)』も改訂されるとのことなので、発表され次第、見てみたいと思います。

 

何か発見があれば、またお伝えいたしますね。

 

今週もありがとうございました、。

それではまた、来週のブログで!

 

執筆担当:川上 佳子


*1 出典:東京証券取引所「東京証券取引所における最近の取組み」(2024年4月18日)

*2 意見の例:「自律的に取組みを進める企業群①には引き続き後押しをしていくことでよい。要請から1年以上が経過しても開示を行わない企業群③の企業に注力していくのではなく、企業群②を重点的なターゲットとすべき(国内機関投資家、コンサルなど)」

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