サーキュラーエコノミー / 勉強用(初学者様向け) / 水資源 / 生物多様性 / 脱炭素
10月20日は「リサイクルの日」でした。
この日にあわせて、サントリーさん*1 が企業広告「#素晴らしい過去になろう」の新シリーズを公開されたとのことで、ウェブページを見てきました。
このウェブページ、いいなぁと思ったのは、「2021年から続いている」ことが一目見てわかるつくりになっているところでした。
↓ 蛇腹(じゃばら)の便せんを縦に開いたようなかたち(紙の折り目も表現されています)がずっと下まで続いています。
「#素晴らしい過去になろう」のコミュニケーションが始まった2021年からずっと。(ページをスクロールすればするほど、過去の内容が表示されます)
2021年からコツコツとこの活動を続けてこられたことが、言葉を尽くさなくとも一目でわかる、優れた工夫だと感じました。
(私たちは制作会社ですので、こうした「伝える工夫」はとても勉強になります…!)
それはさておき。
せっかくなので、この機会に、ペットボトルリサイクルにまつわるお話を簡単に学び直しておきたいと思います。
まず。
サステナビリティ担当の皆さまにとっては今さらなお話かもしれませんが…
ペットボトルのリサイクル問題は、サーキュラーエコノミーだけでなく、
など、さまざまなサステナビリティ課題と密接な関係があります。
このため、飲料業界では2030年度までにペットボトルのリサイクル率を100%にすることを目標に掲げ、さまざまな取り組みや啓発活動が実施しています(サントリーさんの取り組みもそのひとつです)。
では、「ペットボトルのリサイクル率100%」は、どのぐらい高い(難しい)目標なのでしょうか。
実は、日本のペットボトルリサイクル率は欧米との比較では高い水準にあると言われています。
(出典:PETボトルリサイクル推進協議会ホームページ「日米欧のリサイクル状況比較」)
ですが、グラフから読み取れる通り、リサイクル率はここ数年、ほとんど変わっていません。
つまり、今のままでは達成できない可能性が高いのもまた事実のようです。
この目標達成のカギを握るのは「水平リサイクル率」(=ボトルtoボトル比率=ペットボトルからペットボトルへのリサイクル率)であると言われています。水平リサイクル率は、2022年度の段階で29%と未だ低い水準にあります。
こうした状況を受け、清涼飲料業界の業界団体である一般社団法人全国清涼飲料連合会は「2030年度までにボトルtoボトル比率50%」を掲げ、取り組みを進めています*2。
では、ボトルtoボトル比率は、どうすれば向上するのでしょうか。
実はこれ、私たち生活者の行動にかかっている部分が非常に大きいのです。
街中で見かける飲料の自動販売機の横が、こんなふうになっていること、よくありますが…
これが、ボトルtoボトル比率を下げている大きな原因なのだとか。
自動販売機の横のボックスは、飲み終わった後のペットボトル、缶、瓶だけを、「ゴミ」としてではなく、リサイクルするための「資源」として集めることを目的に設置された、空き容器専用の回収ボックス(リサイクルボックス)です。しかし、このボックスをゴミ箱と誤解した人が、回収対象外のゴミを捨ててしまっていることがあります。
実際、(一社)全国清涼飲料連合会が2020年に実施した「リサイクルボックスに関する消費者意識調査」によると、42.4%がリサイクルボックスだと知りませんでした。また、「普段、街中でペットボトルや缶以外のゴミが出た場合、どこに捨てることが多い?」という問いに対し、52.9%が「自動販売機の横にあるボックス」と答えています。
リサイクルボックスへの異物(ペットボトル、缶、瓶以外)の混入は、“再商品化の品質劣化”に繋がり、リサイクルの妨げとなります。加えて、限られたスペースに本来入るべき空き容器が入りきらなくなることもあるので、ボックスから溢れて周囲が汚れたり、異臭を引き起こしたりすることで、設置場所の近隣からの苦情にも繋がり、ボックス撤去の原因にもなるのです。
ちなみに、回収された空き容器は、リサイクル工場でペットボトル・缶・瓶と、それ以外の異物に”手作業”で分けられています。異物にはペットボトル以外のプラスチック容器や、タバコの箱などの可燃ゴミ、たまにスプレー缶が出てくることも。僕は、ペットボトルリサイクル工場で、家庭ゴミから出たペットボトルの異物分別作業をしたことがありますが、何トンもの空き容器から異物を手作業で分別するのは本当に大変なんです。
(出典:SUNTORY POST「自動販売機の横のボックスにまつわる誤解をマシンガンズ滝沢さんが解説!」)
10月20日・リサイクルの日に、サントリーさんが「#素晴らしい過去になろう」の新シリーズとして発表した動画で「RESPECT」を強調されていたのは、こういう事情があったのですね。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 ニュースリリースは、サントリーホールディングス株式会社とサントリー食品インターナショナル株式会社の連名でした。
*2 出典:PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2023」
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。