世界自然保護基金(WWF)から、「生きている地球レポート2024 – 自然は危機に瀕している –」が発表されました。
(レポート紹介動画はこちら)
生物多様性の損失と気候変動という2つの連鎖した危機は、野生生物と生態系を極限まで追い詰めています。『生きている地球レポート2024』は、世界が、地球の生命維持システムの存続を脅かして、社会の不安定化を招くような危険な転換点(ティッピング・ポイント)に直面していることに警鐘を鳴らしています。今後5年間に私たちがとる決断と行動が、地球上の生命の未来にとって、極めて重要です。そして、その具体的な行動として、『生きている地球レポート2024』では、自然、気候ならびに持続可能な開発に関する世界目標を達成することの重要性とともに、自然環境の保全とエネルギー、食料、金融システムを変革する重要性を訴えています。
(出典:WWF Japan Youtubeチャンネル「生きている地球レポート2024 ー自然は危機に瀕しているー」)
「生きている地球レポート( Living Planet Report)」は、WWFが2年毎に発行している出版物で、地球の生物多様性の豊かさと健全性に、どのような傾向がみられるのかを調査したものです。
15回目となる今回の報告書では、1970年から2020年までの50年間に、自然と生物多様性の健全性を測る数値「生きている地球指数(Living Planet Index:LPI)」が73%減少したことが発表されました。
報告書の要旨は、下記の通りです。
自然と生物多様性の健全性を測る数値「生きている地球指数(以下、LPI)」が、1970年から2020年のわずか50年の間に平均73%減少。今回のLPIは、5,495種の野生の脊椎動物(両生類、鳥類、魚類、哺乳類、爬虫類)における、約3万5,000の個体群に対する分析に基づき、「ロンドン動物学協会(Zoological Society of London: ZSL)」が作成。
野生生物の生育環境ごとのLPIの減少が最も著しいのは、淡水域(-85%)で、河川や湖沼、湿地などの自然に生きる淡水魚や両生類などが、非常に高いストレスを受けていることを示す。陸域は-69%、海域は-56%。
LPIの減少が著しいのは中南米・カリブ海(-95%)、アフリカ(-76%)、そしてアジア太平洋地域(-60%)。欧州(-35%)及び北米(-39%)では、自然に対する大規模な負の影響が1970年の指標開始以前からすでに顕在化していたため、マイナス傾向が少ないと考えられる。
自然の損失と気候変動という2つの連鎖した危機は、野生生物と生態系を極限まで追い詰めており、地球の生命維持システムの存続を脅かし、社会の不安定化を招くような危険な「転換点」(ティッピング・ポイント)に世界は直面。しかし、まだ後戻りできない転換点を超えたわけではない。
今後の5年が鍵であり、各国政府や民間セクターは、持続可能な開発目標(SDGs)、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)、パリ協定の3つの国際的枠組みで掲げた2030年世界目標の達成に向けて、自らの目標設定とその実践をしていくことが重要である。国立公園等の保護区や保全上重要な地域に対する政策など自然環境保全のあり方、食料システム、エネルギーシステム、金融システムの4つの変革が解決策。
(出典:WWFプレスリリース 2024年10月10日「『生きている地球レポート2024』発表 自然と生物多様性の豊かさが過去50年間で73%減少 ―地球は危険な転換点に直面、2030年までの取り組みが鍵―」)
全6ページ(図解・写真入り)の「ファクトシート」や、WWFによる解説記事も発表されていますので、10月21日(月)より開催のCOP16を前にしたこの連休のおともに、いかがでしょうか。
それでは、また来週のブログでお目にかかります。
どうぞ良い週末を!
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。