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【ニュース走り書き】
日本企業の「稼ぐ力」強化に向け、
コーポレートガバナンス改革がさらに加速するようです

コーポレート・ガバナンス / ニュース

9月17日、経済産業省のホームページ「最新ニュースリリース」に突如、こんなお知らせが掲載されまして:

「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会を立ち上げます

 

本日のブログは、気になるこのニュースを採り上げます。

 

慌ただしく立ち上げられた割に、強制力あるものになりそうな

さて、このニュースリリース。

読み進めていくと、気になる文字がありました。

 

2.本研究会の取組

本研究会では、日本企業のコーポレートガバナンス改革の進め方について、「稼ぐ力」の強化に向けてコーポレートガバナンス改革を行うに当たって必要な考え方や方法、日本企業のコーポレートガバナンス改革を後押しする方策について検討を行います。また、会社法の改正について、検討すべき事項や考えられる改正の方向性について検討を行います。

(出典:経済産業省 2024年9月17日リリース「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会を立ち上げます」※太線は筆者によるもの)

 

――え!会社法改正ですか?!

 

3.今後の予定

以下の日程で第1回研究会を開催します。
第1回:2024年9月18日(水曜日)午前10時00分から12時00分
(研究会は非公開、後日、議事要旨をホームページに掲載予定。)

 

※第2回以降は月1回程度開催の上で検討を行い、以下のとおり公表することを目指します。
・コーポレートガバナンス改革の在り方に関する取りまとめ(2025年3月目途)
・会社法の改正に向けた検討事項に関する報告書(2024年12月目途)

(出典:経済産業省 2024年9月17日リリース「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会を立ち上げます」※太線は筆者によるもの)

 

なんと、年末(あと3ヵ月しかないですよね?!)には「会社法の改正に向けた検討事項に関する報告書」が公表される予定とは!! ものすごい急ピッチです。

そして、コーポレートガバナンス改革の在り方に関する取りまとめも、年度末(2025年3月)をめどにとのことで…

にわかに慌ただしくなってまいりました。。。

 

会社法改正に向け、どのような内容が検討されるのか

スケジュールの次に私が気になったのは、

会社法がどんなふうに改正される(ことが意図されている)のか、です。

 

これについては、第1回事務局説明資料*1の62ページ以降に記載がありました。

 

  • 従業員・子会社役職員に対する株式の無償発行
  • 実質株主の情報開示制度
  • 株式対価M&Aの拡大
  • バーチャルオンリー株主総会
  • 指名委員会等設置会社の権限の見直し
  • キャッシュアウト法制

(出典:第1回事務局説明資料 p62~「本研究会で会社法改正に向けて検討する事項・論点案」)
※赤字は筆者によるもの

 

これらがすべて会社法の改正事項になると決まっているわけではありませんが、少なくともこれらは、「CG改革の実質化や企業価値向上等の観点から本研究会で議論するべき会社法の改正事項*2」に挙げられていますので、議論の対象となることは間違いなさそうです。

 

個人的に気になるのは「指名委員会等設置会社の権限の見直し」

上述の「会社法改正に向けて検討する事項・論点案」のうち、赤字で表記した事項は、今回新たな論点として挙げられた(と思われる)もの*3――すなわち、緊急性が高く、かつ法による強制力が必要と考えられている議題と考えられます。

 

この赤字表記項目のうち、私が個人的に気になっているのは「指名委員会等設置会社の権限の見直し」です。

 

具体的な論点は、

①指名委員会等設置会社における指名(・報酬)権限を取締役会に帰属させるべきか。

②帰属させる場合、他の機関設計の見直しを含めた、制度設計全体の見直しを行う必要はあるか。

 

の2点とのこと。

 

①の背景にあるのは、「制度創設当時から環境が変化しており、社外取締役が取締役会の過半数を占める指名委員会等設置会社で、一部の取締役のみが参加する指名委員会に、指名の決定権限を帰属させることは不適切である」との有識者の指摘です*4

 

確かに、過半数の独立社外取締役を選任するプライム市場上場会社の割合は増加傾向にあり、2024年7月24日時点では約20%となっています*5。こうした現状を受けての議論なのかもしれませんが、会社法改正ともなればそれ以外の企業にも影響があることを考慮すると、個人的には会社法改正の必要まであるのかは疑問に思います…

 

実際、

②に関しては

「社外取締役が過半数の場合のみ、指名の決定権限を取締役会に帰属させることが考えられるが、その場合、機関設計が更に複雑化するおそれはないか」

「 取締役会に権限帰属させると監査等委員会設置会社と機関設計が類似するため、統合を含めた検討が必要となる可能性があるのではないか」*6

 

と書いてあり、実際に会社法改正となるとオオゴトになりそうな予感満載です。

さて、この部分はどのように議論が進むのでしょうか。

また、この論点が今、このタイミングで出てきた背景には何があるのでしょうか。

引き続き注意深く見て行きたいと思います。

 

ーー

長くなりそうなので、本日はこのあたりで。

会社法の話以外=コーポレートガバナンス改革が今後どのような方向に進みそうかについては、今後、また機会を改めて考えていきたいと思います。

 

それではまた、次回のブログで。

執筆担当:川上 佳子


*1 正式名称は、経済産業政策局 産業組織課 2024年9月18日 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会  第1回事務局説明資料

*2   出典:第1回事務局説明資料 p.81  「3. 会社法の改正」

*3 2023年2月以降開催されている「会社法制に関する研究会」での議論に入っていない内容と思われる、との意味で「新たな論点」としております。出典は第1回事務局説明資料 p.61  「① 会社法の改正に向けた検討」

*4 出典:第1回事務局説明資料 p.26  「有識者による指摘」

*5 出典:第1回事務局説明資料 p.77  「(参考)独立社外取締役が過半数の上場会社」

*6 出典:第1回事務局説明資料 p.78  「指名委員会等設置会社を見直す場合の初期的論点」

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執筆者

  • 代表取締役 福島 隆史

    公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。

  • 川上 佳子

    中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。