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十五夜に欠かせないあの植物(の親戚)は
脱炭素に役立つかもしれないのです

脱炭素

9月17日(火)は、十五夜(中秋の名月)です*1

皆さまのお住まいの近くでは、お月見ができそうでしょうか?

さて。

こんな日にもお仕事を忘れない(?)当ブログでは、本日は「十五夜 × 脱炭素」をテーマにお話してみたいと思います。

 

十五夜にススキを飾るのはなぜ?

十五夜(中秋の名月)に欠かせないものと言えば、月見団子とススキですが…

そもそも、なぜススキなのでしょうか?

 

(↑ススキの写真)

 

収穫の感謝と豊作の祈りをささげる十五夜には、もともと「収穫前の稲穂」を飾っていたそうですが、その代用品として、同じイネ科のススキが使われるようになったのだとか。

イネもススキも、茎が空洞になっています。その空洞には神様が宿るとされてきました。また、ススキにはトゲがありますので、これらが災いや病から作物や家を守ってくれるとの意味合いもあります。

 

なお、ススキによく似ているオギ(これもイネ科)で代用する場合もあるようです。

(↑オギの写真)

 

ススキとオギは大変よく似ているのですが、
本日お話するのはその見分け方ではなく。

ススキとオギをかけあわせた植物が、脱炭素に貢献するかも…というお話です。

 

バイオマス燃料として活用されているGMですが…

その植物の名前は、ジャイアントミスカンサス(略称:GM、和名:オギススキ)。

外来種のような名前をしていますが、れっきとした在来種。
オギとススキの自然雑種で日本に自生している植物です。

ジャイアントミスカンサスは、1935年にデンマークの植物コレクターによって日本で収集され、観賞用植物として持ち出され、ヨーロッパでバイオマス生産性が評価されました*2

海外ではバイオマス植物としてボイラーの燃焼材などに使われています*3

 

※日本では最近、大成建設さんから、ジャイアントミスカンサスの活用に向けた技術開発の話がリリースで発表されていました。

当社は、2020年から平取町の圃場で試験栽培を開始し、寒冷地での諸条件でGMの生育状況などの特性を確認しました。GMは長期に渡り安定した収穫量が確保できる反面、バイオマス燃料として供給する場合には細かく裁断したチップ状態では灯油・重油などの液体燃料に比べ運搬や保管が難しく、コスト面での優位性が確保できないことが明らかとなりました。

そこで当社は、GMをバイオマス燃料として活用する際、収穫時にチップへ一次加工後、今回新たに開発したペレット加工する技術を用いて元の容積の1/10程度まで減容化を実現しました。これにより、GMを効率的に運搬・保管することが可能となり、このたび平取町においてGMを活用してトマト栽培ビニールハウスなど農業施設への熱供給実証に着手しました。この実証を介して灯油・重油などの化石燃料からバイオマス燃料へのエネルギー転換が期待されます。

(出典:「燃料用作物「ジャイアントミスカンサス」をペレット化し熱供給実証を開始 - 地産地消型のエネルギーサプライチェーン構築を目指して」)

 

今、注目されているのはカーボンニュートラルへの貢献です

ジャイアントミスカンサス(GM)がバイオマス燃料として優れている点は、その炭素吸収量にあります。

GMを北海道の耕作放棄地で栽培し、バイオマス発電など地産地消の燃料に使う実証研究に取り組んでいる北海道大学名誉教授の山田敏彦氏は、

  • (GMは)1ヘクタールの栽培面積当たりCO2換算で年間約50トンを吸収できる
  • 土壌中に炭素貯留もできるため、カーボンネガティブの効果がある

と説明しています*4

 

また、農研機構は、GMを「燃料として燃やしたときに出る二酸化炭素の量は成長する過程で吸収した量とほとんど同じで、カーボンニュートラルにつながる」と述べています*5

 

そしてさらに現在、GMの炭素貯留能力解明に向けた研究も進んでいるのです。

GMは、1haあたり50t-Co2/年という高い炭素吸収&土壌貯留能力があるといわれています。

 

ですがその能力についての明確な数値化までは確立されていません。また、炭素吸収・固定量の指標としてJクレジットなど、クレジット化についても手法が確立されていません。そのため、どれだけ植栽しても「〇〇t-CO2固定しています」とグローバルに宣言したり、GHGプロトコル等において自らの排出量と相殺などに反映させることができません。

また、GMは比較的容易に植栽・維持・伐採が可能となっています。

植林は炭素吸収・固定が認められていますが、間伐など維持管理が必須なだけではなく、一度植林すると農地への回復が困難などハードルは高くなります。一方GMは維持の手間が無く、農地への回復も容易なことから、利用する予定の無い期間、大切な土地をただ荒廃させてしまうのではなく、地球環境のため炭素貯留固定に活用する為のツールとして有効といえます。

(中略)

 

2022年より敷島ファームのGHGアドバイザーとしてご協力いただいている農林中央金庫のご尽力により、GMの炭素貯留能力解明について、東京農業大学との共同研究が実現しました。

(出典:敷島ファーム 2023年7月6日「ゼロカーボンビーフへの道Ⅴ ~ジャイアントミスカンサスの炭素土壌貯留能力の解明へ~」)

 

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ーーー

まだ研究中の話ではありますが、

日本の在来種にこのような可能性があるのは嬉しいですね。

今後も注目していきたいと思います。

 

本日は特に結論のないお話ですみません。

今後は脱炭素の話題も色々と織り交ぜていきたいと思います。

 

お読みいただきありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 十五夜は旧暦8月15日の月を指しますので、日付は毎年変わります。

*2 出典:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門(畜産飼料作研究拠点) 飼料作物研究領域 小 林 真「イネ科多年生バイオマス作物  エリアンサスと ジャイアントミスカンサス

*3 出典:農研機構  2022年10月18日付プレスリリース「(研究成果) バイオマス植物として有用なオギススキ新品種の開発

*4 出典:日刊工業新聞  2021年10月27日「産業春秋/ススキで脱炭素と農業振興

*5 出典:NHK 滋賀NEWS WEB 2024年4月23日「バイオマス燃料になる植物 竜王町が栽培へ

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執筆者

  • 代表取締役 福島 隆史

    公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。

  • 川上 佳子

    中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。