コーポレート・ガバナンス、そして取締役会は今、「実効性」に着目されるフェーズであることを、読者さまはよくご存じと思います。
では、
内部通報制度にも今、実効性が強く求められているということはご存じでしょうか?
ここから数回にわたるシリーズで、この件についてお話していきたいと思います。
内部通報制度について、その実効性への着目自体は最近始まったことではありません。
たとえば、令和元年(2019年)10月には「内部通報制度の実効性向上の必要性」という資料が消費者庁から出ています。
ですが、消費者庁の注目が大規模な取り組みになったのは、昨年(2023年)。ビッグモーターの保険金不正請求問題がきっかけでした。
中古車販売大手ビッグモーター(東京・港)の保険金不正請求問題を巡り、消費者庁は3日、同社が内部通報体制を整備していなかったとして、公益通報者保護法に基づく報告を求めた。同法に基づく事業者への報告要請は初めて。
(中略)
消費者庁の新井ゆたか長官は3日の記者会見で「内部通報体制が未整備であることが確認された」と述べた。同庁は1カ月以内をメドに文書での報告を求めた。勧告などの行政措置をとるかは報告を踏まえて検討する。
(出典:日経電子版 2023年8月3日「ビッグモーターに消費者庁が報告要請 内部通報巡り」)
この件を重く見た消費者庁は、2023年12月、上場企業約4千社を含む1万社を対象とした内部通報体制の実態調査を実施しました。
消費者庁は上場企業約4千社を含む1万社を対象に、内部通報体制の実態を調査する。保険金不正請求問題が起きた中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)では体制の不備により告発が無視され、不正への対応が遅れた。調査によって制度を周知するとともに体制整備を促す。
(出典:日経電子版 2023年11月9日「内部通報、消費者庁が1万社の実態調査へ」)
【調査結果】
この時の消費者庁の動きは徹底していました。
私がなぜそう思うかと申しますと… 消費者庁はこの時、企業に対する調査だけでなく、同時期に以下の2種類の調査も実施していたからです。
【調査の目的】
内部通報制度についての理解度や勤務先における窓口設置の認知状況、通報に対する意識を把握し、事業者の内部通報制度の実効性向上に向けた施策の参考とすること*1。
【調査結果】
【調査の目的】
企業が公表した不祥事に関する調査報告書(第三者委員会調査報告書を含む)を収集し、内部通報制度の実効的な運用を阻害する要因を整理・分析し、不正の早期発見・是正のための提言を得る*2。
【調査結果】
以上3種類の調査から、消費者庁が導き出した結論とはどのようなものだったのでしょうか。
そして、消費者庁から経営トップに対する提言とは?
この点については、次回のブログでお伝えさせてください。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
*1 出典:消費者庁「内部通報制度に関する就労者1万人アンケート調査の結果について」(令和6年2月) p1
*2 出典:消費者庁「企業不祥事における内部通報制度の実効性に関する調査・分析」(令和6年3月) p2
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。