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HINTサステナ情報のヒント

GRIとIFVIがパートナーシップを開始するそうです(その1)
インパクト加重会計①

サステナ開示をめぐる動向

インパクト加重会計についても少しずつ書いていこうかなと

最近、「インパクト加重会計」という単語を耳にすることが少しずつ増えてきました。

 

この概念は開発が緒に就いたばかりの新しいものであり、公認会計士が代表を務める弊事務所としては、(少なくとも現時点では)活用上の課題がさまざまあると考えておりまして…

そうした事情もあり、これまで本ブログではインパクト加重会計について採り上げてこなかったのですが:

 

本日採り上げるニュースを見て、サステナビリティ担当者さまにおかれましても(少なくとも知識としては)インパクト加重会計について知っておかれたほうが良いのではと考えるに至りました。

ということで、ここからは、少しずつ書いていこうと思います。
なんらかのご参考となりましたら幸いです。

 

きっかけはGRIとIFVIがパートナーシップを開始するとのニュース

さて。

私がインパクト加重会計についてお話したほうがいいかも…と考えるに至ったニュースは、GRIが9月5日付で発表したこちらのリリースです。

Understanding impact: new collaboration commences between GRI and IFVI

 

パートナーシップの内容として記載されていたのは、下記の5点です。
(下記は筆者による仮訳ですので、正確な内容および詳細はリリース原文をご参照ください)

 

両者は、サステナビリティデータを財務データと同様に利用しやすく、実行可能で比較可能にすること(make sustainability data as accessible, actionable and comparable as financial data)を目指しており、覚書(MoU)に基づき以下に取り組むことに合意した:

 

① 互いの方法論、アプローチ、基準の市場浸透のための協力
② 研究やイベントなどの相互支援
③ サステナビリティ報告やデータの活用可能性に関するセミナーや円卓会議の開催
④ 共同資金調達提案を通じた資金調達活動の連携
⑤ GRIのイノベーションラボを通じて、共同で能力開発(capacity building)の取り組みを実施

 

このニュースのどこが重要だと感じたのかについてお話する前に、本日はまず、

  • そもそもインパクトって何?
  • インパクト加重会計って何?(インパクト会計とどう違うの?)

について簡単にご説明しておきたいと思います。

 

インパクト会計の基礎知識

Q:そもそもインパクトって何?

決まった定義があるわけではないのでご説明が難しいところではありますが、よく知られているところではインパクト・マネジメント・プロジェクト(IMP)の定義があります。

「インパクトとは、組織によって引き起こされるアウトカムの変化のことである」

 

(出典:金融庁金融研究センター「インパクト創出と企業価値向上は両立するのか―事例調査とパーパスの内容分析に 基づく実証分析の両面から― 」(林 寿和・松山 将之、2023年8月)

 

Q:インパクト加重会計って何?インパクト会計とどう違うの?

インパクト会計(Impact accounting あるいはAccounting for impact)の定義について、Impact Taskforce*1 では「ある組織がステークホルダーのために創出・保存、あるいは棄損した相対的価値を共通の単位で推定する、幅広い価値評価手法を含む」ものとしています。

そして、具体的には下記の3 通りのアプローチ、あるいはその複数の組み合わせにより行われると指摘しています。

つまり、インパクト加重会計とは、“インパクト会計のアプローチの一つである「貨幣的評価」に該当するもの”と定義することができるようです*2

 

(出典:金融庁「インパクト投資等に関する検討会」第6回資料 「インパクトが企業価値等に与える影響に関する研究分析:進捗の概要報告」(林 寿和・松山 将之、2023年3月22日)

 

第1回はここで終わります。
(週明けにまた、続きを書いていきたいと思います)

 

今回も、お読みいただきありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 正式な出典は「Time to deliver: Mobilising private capital at scale for people and planet」。Impact Taskforceは、2021年のG7 イギリス議長国下において、イギリス政府の支援の下、民間主導のイニシアチブであるImpact Taskforceが提言。(以上、出所は金融庁金融研究センター「インパクト加重会計の現状と展望   半世紀にわたる外部性の貨幣価値換算の試行を踏まえた一考察」(林 寿和・松山 将之、2023年6月)

*2 出典:金融庁金融研究センター「インパクト加重会計の現状と展望   半世紀にわたる外部性の貨幣価値換算の試行を踏まえた一考察」(林 寿和・松山 将之、2023年6月)

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執筆者

  • 代表取締役 福島 隆史

    公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。

  • 川上 佳子

    中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。