SusTB communications サスティービー・コミュニケーションズ株式会社

未来に響くコミュニケーションレポートの企画・制作×コンサルティング

HINTサステナ情報のヒント

コーポレートガバナンスとサステナビリティ開示に関する
最近の出来事まとめ

ガバナンス / コーポレート・ガバナンス

金融庁が設置している「ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム」の第9回が開催されたようで、8月末に資料が更新されていました。

 

ざっと目を通してみたところ、コーポレートガバナンスとサステナビリティ開示に関する最近の出来事や課題、今後の取り組みがわかりやすくまとまっていましたので、ポイントを抜粋・整理してお届けします。

 

※以下に記載したポイント1~3は、下記2点の資料(いずれも英語)の内容をもとに、筆者が抜粋・作成したものです。正確な内容および開示された内容の全体については、下記資料の原本をご確認いただけますようお願いいたします。

コーポレートガバナンス改革の実践に向けた アクション・プログラム 2024

フォーラムにおける金融庁プレゼン資料

 

※なお、文中のリンクは(ご参考用に)筆者が付したものです。

 

ポイント1:利益創出と成長を意識した経営*1

(1)最近の出来事(東証の取り組み)
(2)課題
  • 多くの上場企業が上記の要望を踏まえて取り組んでいるが、国内外の投資家からはさらなる取り組みの進展を期待する声も聞かれる
  • 指摘事項の例:要請を重要な経営課題として緊張感を持って位置づける企業と、形式的な対応に終始する企業との二極化
(3)今後の取り組み

以上を踏まえ、投資家や金融庁・東証等の関係者は、各社の取組状況を継続的にフォローアップし、実質的な取り組みを促す必要がある

↓ (着目すべきポイントは)

  • 開示内容と取組の実態が異なっていないか
  • 取締役会が主体的・能動的に取組に取り組んでいるか
  • 投資家との対話の中で具体的な議論が行われているか
  • 取り組みのためのリソースが確保されているか
  • 中長期的な企業価値向上の観点から具体的な成果を意識した分析・評価が行われているか、等

 

【筆者よりひとこと】
(2)課題に記載されていた「要請を重要な経営課題として緊張感を持って位置づける企業と、形式的な対応に終始する企業との二極化」については、東証が8月30日に公開した「「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する今後の施策について」の「(参考2)投資家等へのヒアリング結果」にも記載されていますので、あわせてご覧いただくとよりご理解が深まるものと存じます。

 

ポイント2:情報開示の質の向上、海外投資家との対話の促進*2

(1)最近の出来事(東証の取り組み)
(2)課題(指摘されていること)
  • 情報開示が充実する一方、企業が開示する情報の内容と実際の取り組みに差異がある
  • 情報開示のタイミング。株主総会前の有価証券報告書の開示など、投資家が求める情報を効果的・効率的に提供する必要あり
  • 特にプライム市場に上場している企業については、グローバルな投資家との対話を積極的に行うとともに、英語によるタイムリーな情報開示が必要であるとの指摘がなされている。
(3)今後の取り組み

企業の情報開示を実質的に充実させるためには、情報開示による透明性の向上が市場の信頼につながることを意識することが重要。

(具体的には)

  • より多くの企業が株主総会前に有価証券報告書を開示するような環境整備を検討すべき(金融庁は有報と事業報告書の重複など開示効率化も含め実態を検証し、抜本的な環境整備に向けた議論を進める)
  • 海外投資家との対話の推進については、英文開示の義務化を踏まえたフォローアップが必要
  • 海外投資家の期待に意欲的かつ積極的に応える企業群を「見える化」するため、収益性、市場評価、成長性、独立取締役の選任、取締役会議長や指名・報酬委員会委員長の属性、女性役員比率などのコーポレート・ガバナンス状況に関する指標を具体的に示した一覧表を公表すべき

 

【筆者よりひとこと】
(2)課題(指摘されていること) に記載されていた「企業が開示する情報の内容と実際の取り組みに差異がある(原文の表現はthe content of information disclosed differs from the actual initiatives)」は、レポート制作に携わる者として重く受け止めました…。

 

ポイント3:サステナビリティを意識した経営の推進*3

(1)最近の出来事

なお2023年9月にはG20/OECDコーポレート・ガバナンス原則が改訂され、新たに「サステナビリティとレジリエンス(Sustainability and resilience)」の章が追加された。

(2)課題(指摘されていること)
  • サステナビリティを意識した経営を推進するためには、社会的価値と経済的価値の関連性、非財務情報と財務情報の関連性(コネクティビティ)を意識する必要がある
  • サステナビリティに対する監督の役割に対する取締役会の意識が低い
  • ダイバーシティを確保するためには、数値目標の達成だけでなく、必要な能力の確保や社内の人材育成が重要
  • ダイバーシティを国籍や ジェンダーの視点から意識するだけでなく、それらに基づく「意見」の多様性を確保することが、 経営の実効性向上に資する
  • 企業文化は企業価値の創造・維持の基盤。経営や対話において企業文化を意識することが、中長期的な企業価値のさらなる向上のために重要
(3)今後の取り組み
  • 対話の活用:財務情報と非財務情報の関連性や企業価値向上という成果に対する意識、取締役会や経営陣による監督の役割、企業文化を意識
  • ダイバーシティの確保:グローバル人材を含めた人的資本への投資、人材育成方針の策定などに留意
  • レジリエンス:企業経営は、パンデミック、サイバーセキュリティリスク、地政学的リスクなど、サプライチェーン全体を通じて様々なリスクにさらされている → レジリエンスを意識した経営が重要

以上の観点から、国際的な比較可能性を確保したサステナビリティ関連情報の開示・保証に関する包括的な規制の枠組みを構築するとともに、サステナビリティを意識した経営の具体例を関係者間で共有すべき。

 

【筆者よりひとこと】
(3)今後の取り組みに記載されている「レジリエンス」は、2023年9月に改訂されたG20/OECDコーポレート・ガバナンス原則(=「サステナビリティとレジリエンス(Sustainability and resilience)」の章が追加された)を意識しているのかも…と考えました。

 

少しでもご参考となりましたら幸いです。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

執筆担当:川上 佳子


*1 「コーポレートガバナンス改革の実践に向けた アクション・プログラム 2024」での番号は4

*2 「コーポレートガバナンス改革の実践に向けた アクション・プログラム 2024」での番号は5

*3 「コーポレートガバナンス改革の実践に向けた アクション・プログラム 2024」での番号は7

記事一覧へ