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企業が社員の睡眠改善に取り組むべきなのはなぜ?
具体的には何をすれば?

おすすめの本 / 人的資本開示

9月3日は「睡眠の日」です*1。そこで本日のブログは、健康経営の面でも注目が高まっている「睡眠」をテーマとして採り上げたいと存じます。

なぜ企業が社員の睡眠改善に取り組むべきなのか

さて。

先ほど私は “健康経営の面でも注目が高まっている「睡眠」”と書きましたが、

「そもそも、睡眠は個人の話でしょ?なぜ会社が取り組まなければならないの?」

と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。推進を担当されるお立場の方が、社内で理解が得られずに苦労される場面もあるのではと拝察します。

 

本日は、そうした方々のお役に立ちそうな数字をひとつご紹介したいと思います。

その数字は、

経済産業省の「企業の「健康経営」ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~ (改訂第1版)」p37にある「プレゼンティーイズム損失コストと健康関連指標の関係一覧」(下図ご参照)に載っています。

 

(出典:経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課「企業の「健康経営」ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~ (改訂第1版)」)

 

私が注目したのは、睡眠休養リスク者の損失コストが、非リスク者のそれを 328,644 円 上回っているという結果です。

これは、わかりやすく言い換えますと

「睡眠休養の改善」は、肥満や運動習慣の改善にくらべて、金銭面で10倍近い効果がある

ということを示しているのです。

 

・・・いかがでしょう? この数字、なかなかのインパクトがありますので、社内にご説明をされる際にお使いいただきやすいのではないでしょうか。

 

睡眠改善への取り組み、具体的には何が期待されているか

さて。

「企業として、社員の睡眠改善に取り組まなければならないことはわかった。でも具体的には何をすれば良いのか?行政としては何を期待しているのか?」との疑問がわいた方もいらっしゃるかと存じます。

そうした方のご参考になりそうな資料として、「休養に関する数値目標と施策の提案 -次期健康づくり運動プランにおけるアクション・プランの提案- 」をおすすめいたします。

 

厚生労働行政推進調査事業の一環としておこなわれたこの研究の要旨(p92)をお読みいただくと、睡眠改善への取り組みとして企業に何が期待されているのか、また、行政としては今後どう動いていくのかを読むことができます。

健康日本21(第三次)における国民の健康増進に寄与する休養目標として、「睡眠休養感」および「睡眠時間」が十分に確保できていることが設定され、これに係る具体的な数値目標が定められた。

 

この数値目標を達成するためには、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に基づき適切な睡眠の確保のための目標および具体的対策を広く国民に教育・啓発することがまず求められる。さらに、国や企業がこれを達成するために、国民・企業職員の休養時間を確保し、労働負担を適正化するための環境整備が必要であるとともに、国民一人ひとりが、自身の睡眠状態を適切に評価可能とする客観的睡眠評価デバイス(ウェアラブルデバイス等)を利用し、適切に活用可能な基盤整備が必要である。

 

これを達成するために、時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度の周知・徹底および企業や業種ごとに適切な就業ルールを定め、充実させるとともに、ウェアラブルデバイス等を用いた睡眠管理を普及させるためのインフラ整備、公的支援の導入も有効であると思われる。

(出典:厚生労働行政推進調査事業費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業) 分担研究報告書 休養に関する数値目標と施策の提案 -次期健康づくり運動プランにおけるアクション・プランの提案- )

 

施策の図解と説明はp97に載っていますので、あわせてご参照ください。

 

(補足説明)

 

企業様の開示に見る睡眠改善への取り組み事例

最後に。

社員の方々の睡眠改善への取り組みについて、サステナビリティレポートに開示している企業様の事例をいくつか探すことができましたので、以下にご紹介します。

(以下、企業名の並びは五十音順。敬称略)

■アサヒグループホールディングス

▽出典:サステナビリティレポート2024 P53

▽開示内容:

健康指標のひとつに「適正な睡眠と休養の確保率」を掲げ、数値を開示

■JFEグループ

▽出典:サステナビリティ報告書2023 P171

▽開示内容:

【JFEエンジニアリング】
過去の健康診断結果をもとに、睡眠対策を実施。
具体的な取り組みとしては、
- 2019年より、仮眠や呼吸法を実践する「セルフケア研修」を全社展開
- 2021年より、睡眠リズムを中心とした「セルフケア研修II」を全社展開
- 2022年より、個別保健指導の強化(睡眠、肥満、喫煙など個別指導)

■ソフトバンク

▽出典:サステナビリティレポート2024 P166, 168,169

▽開示内容:

① 健康経営全体のKPIのひとつに「睡眠に関する 休養感」を掲げ、数値を開示

② 社員の睡眠時間を十分に確保することを目的のひとつとして、勤務間インターバル制度を導入

③ メンタルヘルス向上策の一環として、下記を実施
–   睡眠セミナーの開催・アーカイブ配信(参加人数:約1,400名)
–   ヘルスケアアプリHELPO:睡眠タイプ診断・睡眠コンテンツ展開
–  SAS検査(睡眠時無呼吸症候群)の割引提供

■ニッスイグループ

▽出典:サステナビリティレポート2023 P86

▽開示内容:
「2023年度の取り組み(新規・拡充)」のひとつとして、「健康UPセミナーの開催(睡眠、目の健康、歯の健康、産業医講話)」を掲載

 

今回のブログでは時間の関係で確認できませんでしたが、有価証券報告書にはより多くの事例が掲載されているのではと考えております。別の機会に改めて確認し、発見があればご紹介したいと存じます。

今回も、お読みいただきありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


*1 睡眠の日は、「睡眠についての正しい知識の普及と国民の健康増進への寄与」を目的として、睡眠健康推進機構が日本睡眠学会との協力によって制定されました。睡眠の日は年に2回あります。3月18日(春の睡眠の日)と、9月3日(秋の睡眠の日)です。

*2 出典:健康づくりのための睡眠指針の改訂 に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月) p48

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執筆者

  • 代表取締役 福島 隆史

    公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。

  • 川上 佳子

    中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。