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HINTサステナ情報のヒント

「開示資料を機械翻訳にかけてあなたの母国語で読みましょう!」
JPXはそのように推奨しています

英文開示

「JPxData Portal(ベータ版)」の提供が開始されました

8月26日に、JPXグループ等の情報を網羅した「JPxData Portal(ベータ版)」の提供が開始されました

 

JPxData という名前には、

  • 「JPXグループ等のデータポータルサイト」
  • 「日本(JP)とデータ(Data)を掛け合わせる場(JP×Data)」

の2つの意味が込められているのだそうで、

将来的には日本市場のデータの集積地として、幅広くご利用いただけるサイトを目指していきます。

と、並々ならぬ力の入れようが感じられます。

 

(画面イメージ)

(出典:日本取引所グループHP「JPXグループ等の情報を網羅した「JPxData Portal(ベータ版)」の提供スタート」)

 

「チュートリアル」の中に、気になるメニューがあるのです

さて、この JPxData Portal(ベータ版)」、グローバルメニューの中に「使い方から探す」というものがあるのですが。

 

この中に、

チュートリアル:開示資料を機械翻訳で読んでみよう

というものを見つけて、驚きました。

 

もちろん、英語でも同じ内容のページが作られています。

About disclosures and machine translation

 

ページ内には、こんなことが書いてありました。(※太字は筆者によるもの)

まず、「開示資料を探す」で読みたい資料のHTML版があるかどうか検索してください。現在はコーポレートガバナンス報告書のみHTML版を利用できるのですが、夏頃には決算短信もHTML版の提供予定です。その後も、HTML版の拡充を図ろうと考えています。

 

翻訳ボタンを押すと、HTMLファイルが機械翻訳にかけられて表示されます。

 

この方法のメリットは、​

・1〜2クリックの操作で翻訳することができる

・無料で利用できる

・​元ファイルがHTMLになっているので、レイアウトが崩れない

・HTMLファイルさえ公開されていれば即時に読むことができる​

デメリットは、

・機械翻訳なので誤訳のリスクがゼロにならない

・画像データは翻訳の対象外になる場合が多い(一部ブラウザは画像ファイルもAI-OCRで読みこんで翻訳するものが出ています)​

特に誤訳リスクが気になる場合は、この方法はお勧めしません。

一方で、ゼロよりは少しでも多く母国語で情報が取れた方が良いという投資家も増えており、​そういった方には、HTMLと機械翻訳の組み合わせは、検討に値する選択肢だと思います。

(出典:JPxData Portal(ベータ版)「チュートリアル:開示資料を機械翻訳で読んでみよう」2024年8月27日アクセス)

 

  • 現在はコーポレートガバナンス報告書のみHTML版を利用できるのですが、夏頃には決算短信もHTML版の提供予定です。その後も、HTML版の拡充を図ろうと考えています。
  • ゼロよりは少しでも多く母国語で情報が取れた方が良いという投資家も増えており、​そういった方には、HTMLと機械翻訳の組み合わせは、検討に値する選択肢だと思います。

 

などの表現を見ると、「開示資料を機械翻訳で読む」ことを奨励するスタンスであることがわかります。

 

英語版には「PDFを丸ごと翻訳する方法」も掲載されており

上述の日本語ページにはHTMLページでの利用法しか書かれていないのですが、私が2024年8月27日に確認した限りでは、英語版ページには「Machine translation of PDF documents」という内容も載っています。

 

 

・・・「開示資料を機械翻訳で読む」ことを、懇切丁寧にガイドしているとの印象が強まりますね・・・

 

開示が勝手に機械翻訳にかけられる中、誤読防止のためできることは

このように機械翻訳が「推奨」されていく中、企業様としてまずご心配なのは「誤読」ではないかと存じます。

この点については、JPXが公開している「英文開示実践ハンドブック」の「3-4 機械翻訳を上手く利用するコツ」がご参考になると存じます。

ここで推奨されているポイントは、2つあります。
(以下、出典は「英文開示実践ハンドブック」p20~21)

 

1点目は、「逆翻訳」の利用です。

原文と、翻訳結果を逆方向に(すなわち、原文の言語)に翻訳して得られる文(逆翻訳と呼ぶ)を比較します。機械翻訳の利用者は原文(と逆翻訳)が理解できるはずなので、原文と逆翻訳の内容が同義かどうか判断できます。

 

2点目は、「日本語の文章を書いた本人が機械翻訳を使うこと」です。

原文作成者は意識していないのですが、誤訳の原因は原文に帰することが多いのです。逆に原文の曖昧性をなくせれば、人間も機械も正訳を出す確率が上がります。ここはポイントで、曖昧でない原文作成は人間翻訳の場合でも機械翻訳の場合でも効果的です。英文開示のための基本と言えるでしょう。日本人が相手だと済んでいたことが海外向けには済まないということです。

 

さらには、通常行われている原文作成と翻訳の分業体制ではなくて、著者が機械翻訳を使うことによって、「翻訳者に依頼せず著者が自分で翻訳する」という、著者のみで完結する新しい翻訳枠組みが可能になります。著者であれば、長い文を短くしたり省略されている主語を補ったり等で意味が同じ別の文に直して再度機械翻訳にかけることが簡単にできます。これを満足が行くまで繰り返す。「満足が行く」という判定プロセスには逆翻訳が役立ちます。

 

英文版は制作していない媒体や、
英文版の開示が遅れることがわかっている場合などは、
この2点を覚えておいていただくと、お役に立つときがあるかもしれません。

お読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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執筆者

  • 代表取締役 福島 隆史

    公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。

  • 川上 佳子

    中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。