アクティビスト対策というと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。
株主提案への反対意見をまとめる。株主還元策を見直す。投資家との対話を増やす。場合によっては買収防衛策を検討する。
いずれも、アクティビストが現れてからの対応です。
しかし、FCLTGlobalが2025年に米国・日本・欧州で行われたアクティビストキャンペーン100件を分析したところ、企業側の弱点は、それより前から生じていたことが示されています。
分析対象企業のうち、71%には信頼できる長期ロードマップがなく、55%では取締役会が戦略的な論点に十分な時間を使っていませんでした。少なくともどちらか一方の問題が確認された企業は90%に上ります。なお、この調査は統計的な代表性を保証するものではなく、100件の事例から傾向を把握するための分析です。
FCLTGlobalがいう長期ロードマップには、単なる長期目標だけではなく、次の要素が含まれます。
競争優位と成長ドライバー
中長期の目標
目標を実現する戦略計画
資本配分の優先順位
進捗を確認するKPI
これらが示されていなければ、企業が何を目指し、どのような順序で資本を使おうとしているのかを、投資家は判断できません。
特に日本企業については、多額の現預金や政策保有株式を持ちながら、それをどのように活用するかについて、公開された資本配分の枠組みがないことが問題として指摘されています。
ここで注意したいのは、現預金を持つこと自体が問題だという話ではないことです。
成長機会に機動的に対応するため、景気変動に備えるため、あるいは財務の安定性を確保するために、一定の現預金を持つことには合理性があります。
問題は、なぜその金額を持つのか、いつ、何に、どのような優先順位で使うのかが説明されていないことです。
2026年7月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードは、取締役会に対し、企業の「成長の道筋」を構築・提示したうえで、成長投資や事業ポートフォリオの見直しなど、具体的な経営資源配分を説明することを求めています。
さらに、経営戦略や計画に照らして、資源配分が適切に行われているかを取締役会が継続的に検証することも示されました。
金融庁は、現預金の保有を一律に否定しているわけではありません。必要性や合理性を説明できるのであれば、現預金を保有することも適切な資源配分の一つになり得ると整理しています。専ら株主還元に頼る短期的な行動ではなく、中長期的な企業価値向上につながる成長投資を促すことが、改訂の趣旨です。
ここからは、私の読みです。
今回の調査とCGコード改訂を並べてみると、企業がアクティビストに狙われやすくなる理由は、単に「現金を持ちすぎているから」ではないように見えます。
より大きな問題は、その資本の使い方を誰が考え、誰が決め、誰が継続的に検証しているのかが見えないことです。
会社側が資本配分の考え方を示さなければ、アクティビストが「この現金は還元に回すべきだ」「この事業は売却すべきだ」という別の案を提示します。
法的な決定権がアクティビストに移るわけではありません。
しかし、最初に論点と選択肢を言語化した側が、議論の出発点をつくることになります。
ーーー
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。