20年前の今日、2006年8月24日。国際天文学連合(IAU)は「惑星」の定義を決め、冥王星を準惑星に分類しました。冥王星そのものが変わったわけではありません。新しい天体が次々と見つかり、それまでの物差しでは太陽系を整理しにくくなったため、分類を決め直したのです。
いま、自然資本でも「物差し」をめぐる大きな整理が進んでいます。
Nature Positive Initiative(NPI)によれば、自然の状態を測る指標・手法は600以上あります。多すぎれば、企業ごとに違う物差しを使うことになり、比較や判断が難しくなります。
そこでNPIが進めているのが、State of Nature(SoN)指標の共通化です。2026年の最終協議案では、「生態系の広がり」「生態系の状態」「種の絶滅リスク」「種の個体群」を軸に、事業拠点と、その周辺のランドスケープ/シースケープの両方から自然の変化を捉える構造になっています。
最終協議は3月24日に終了し、4月にはTNFD、SBTN、GRIが、自らの枠組みにSoN指標をどう組み込むかについて協議を始めました。企業にとっても、共通の物差しを前提に自然を把握する流れは、かなり具体的になっています。
ただし、ここからが重要です。
天文学では、物差しを変えても冥王星は変わりません。ところが企業のサステナビリティでは、何を測るかが、資金配分や施策を変えます。
たとえばSoNでは、生態系の面積の増減を測ります。しかし面積が同じでも、生態系の状態、そこに生きる種、周辺とのつながりは同じではありません。「測りやすく、評価されやすい数字」の改善だけに施策が寄れば、物差しからこぼれた自然が軽視される可能性があります。
NPI自身も、一つの指標では自然の状態を捉えきれないとして、SoNを必要に応じて補完する「最小限の共通セット」と位置づけています。実際、企業による試行を経て、指標体系そのものも2026年案で再編されました。
だから、SoN指標が整備されても、KPI欄に入れて終わりではありません。
共通指標で比較可能性を確保しながら、その物差しでは捉えきれない自社固有・地域固有の自然について、何が重要で、どう把握しているのかを説明する。
「何を測ったか」だけでなく、「その物差しでは何が見えないか」まで考える。自然資本開示の分かれ目は、そこにあるのだと思います。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。