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意見要旨は、企業側にも触れていた:「サステナビリティと事業戦略の距離」という指摘

サステナビリティレポート / 統合報告書

前回、8月5日公表の「サステナブルファイナンス有識者会議(第30回)意見要旨」を取り上げ、サステナブルファイナンスの守備範囲が「個別のESG案件」から「経済そのものが長く機能すること」へ広がりつつある、という話を書きました。

今日は、その続きです。この意見要旨、実は企業側に直接触れている箇所があります。「サステナビリティ経営/コーポレートガバナンス」という項目です。

 

3つの記述

意見要旨から、企業に関わる部分を拾うと、おおむね次の3点です。

 

1. 全社浸透には「レジリエンス概念」の取り込みが有用

サステナビリティを全社に浸透させるうえで、リスク対応、つまりレジリエンスという切り口が有用ではないか。経営層やサステナビリティ推進部門に留まっていることが課題である、という趣旨の指摘です。

 

2. サステナビリティと事業戦略の間に、まだ距離がある

サステナビリティをリターンに結びつけることが依然として課題であり、経営陣(取締役会)の理解促進が特に必要、とされています。

 

3. 銀行のサステナビリティ対話は、顧客理解の手段

サステナビリティ関連の継続的な対話を通じて顧客の事業やビジネス実態を把握することが重要、という記述があります。地域金融機関による中小企業支援にも言及があります。

 

これは、開示が増える話ではないと思います

3点を並べると、新しい開示要求が来る、という読み方をしたくなるかもしれません。でも、私はそうではないと思っています。

 

開示項目が増える話ではなく、開示を読む人が変わる話です。

前回触れた「ねじれ」の指摘を思い出してください。サステナビリティ情報を消化しているのは主にESGスペシャリストで、その人たちは運用の意思決定をしていない──という構造です。意見要旨は、これを課題として明示しました。

このねじれが解消される方向に動くなら、企業の開示を読む人は、ESG専門チームから投資・融資の意思決定をする人へ移っていきます。

 

そうなると、問われ方が変わります。

これまで問われがちだったのは、たとえば

  • サステナビリティ目標を達成していますか
  • CDPやTNFDで何を開示していますか

でした。

ここに、

  • その課題は、御社のリターン、投資計画、事業ポートフォリオ、供給網、レジリエンスにどう効くのですか

が加わってきます。
つまり、同じ資料を、違う目的で読まれる、ということです。

銀行の対話が「顧客理解の手段」と位置付けられているのも、同じ方向を指していると思います。サステナビリティ対話がCSR的な別枠の会話ではなく、企業を理解するための通常の銀行業務に入り始めている——そう読めます。

 

今年の開示で、確認しておけそうなこと

まだ制度が動いたわけではないので、いま何かを作り直す必要はないと思います。ただ、今年の統合報告書・サステナビリティレポートを見直すときに、次の3つだけ確認しておくと、来年以降が少し楽になるかもしれません。

① マテリアリティの一つひとつに、「なぜそれが自社の課題なのか」の経路が書けているか

「重要だから重要」になっていないか。事業のどこに、どう効くのか。

 

② 取組の説明が、活動量で終わっていないか

削減量、研修時間、認証取得数。それ自体は必要ですが、その先に「だから事業がどう強くなるのか」が一行あるかどうか。

 

③ レジリエンスという言葉が、BCPの章だけに閉じ込められていないか

意見要旨で「レジリエンス概念の取り込みが全社浸透に有用」とされたのは、たぶんここです。水源、災害対応、サプライチェーン強靱化、人材基盤。これらが「コスト」ではなく「事業を成立させ続ける条件」として書けるかどうか。

 

この先の話

ここまでが「何が起きたか」です。

ただ、この話を突き詰めると、統合報告書の価値創造モデルそのものに手を入れる話になります。「社会のサステナビリティ向上」を、価値創造の終点として描くのか、次の価値創造の条件として描くのか。そして、それを書くのは統合報告書なのか、サステナビリティレポートなのか。

そこはまた、別の機会に。

 

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本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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