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地下水は、あとどれだけ使えるのか。国交省検討会が全国一律の実態把握を提言

水資源

日本国内で生産されるミネラルウォーターは、2000年の約89万キロリットルから2024年には約503万キロリットルへ増えました。原水の大半は地下水です。製造業でも、2010年から2020年の10年間に、採取を規制する条例のない市区町村で地下水を利用する事業所が増えました。半導体事業の拡大やデータセンターの地方分散により、水需要が高まる地域も見込まれます。

地下水は、生活用水の約19%、工業用水の約28%、農業用水の約5%に利用されていると推計されています。では、ある地域で地下水をあとどれだけ使えるのか。問いに数値で答えられる自治体は、ごくわずかです。

 

規制の空白と、数値の空白

地下水採取を規制する条例は、26都府県と236市区町村で計269制定されています。規制対象となる市区町村は714で、全国の約4割にとどまります。上水道事業の地下水構成比が50%を超える地方公共団体でも、約6割では条例等による規制が行われていません。

条例がある地域でも、地下水の状態が数値で把握されているとは限りません。国土交通省が2026年1月から2月に規制条例を持つ地方公共団体へ実施した調査には、243件の条例について回答がありました。うち56.4%では採取量の報告義務がなく、61.7%では地下水位の定期観測が行われていません。地下水収支を推計しているとの回答は5.8%、賦存量については4.9%でした。

地下水の流れは行政区域の境界で止まりませんが、条例は自治体単位で制定されます。担当職員や知見の不足、観測コスト、周辺より強い規制が産業振興上不利になるとの懸念も課題に挙がりました。

 

規制の出発点は地盤沈下だった

国の法律には、工業用水法(1956年制定)といわゆるビル用水法(1962年制定)があります。いずれも地盤沈下の防止を目的とし、対象地域は沈下が現に発生している地域に、用途も限定されました。

一方、自治体の条例は障害が起きた後の対応とは限りません。条例調査では、制定の背景として49.8%が地下水障害の未然防止を挙げ、実際に障害が発生したことを挙げた回答は18.1%でした。ただし全国一律に採取の実態を把握する仕組みはなく、規制の空白地域が残ります。

 

検討会が置かれた経緯

国土交通省と内閣官房水循環政策本部事務局が設置した「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」は8月4日、提言「地下水の適正な保全と利用のあり方について」をとりまとめました。設置は、2026年1月23日にとりまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を踏まえたものです。国籍情報を含む統一的な考え方による採取実態の把握を検討し、2026年夏までに基本的な考え方を整理するとされていました。

提言によれば、外国人等によると思われる地下水採取は12の地方公共団体から49件の報告があった一方、地下水利用の障害や住民トラブルといった支障事例は確認されていません。林野庁の調査でも、外国法人等が取得した森林で取水を目的とした開発事例は報告されていません。

 

提言が示した仕組み

提言は、他の地下水利用等に影響を与えうる一定規模以上の採取について、国籍を含む実施主体の情報、位置、用途、採取量等を全国一律で行政庁が把握できるようにすべきだとしています。揚水試験の結果等を基に周辺への影響を確認し、支障のおそれがある場合には是正を求められるようにすること、採取後も地下水位等の基礎データを継続的に取得することも挙げられました。

さらに、需給が逼迫し支障のおそれがある地域については、地域を指定したうえで、より小規模な採取も把握し、地下水シミュレーション等を活用して「地下水利用可能量」を算出し、採取量が範囲内に収まるよう調整できるようにすべきだとしています。地下水利用可能量は、地下水涵養量を基本として算出するとされました。仕組みのあり方については、法制度を含め検討すべき、というのが提言の結論です。

 

企業の水管理との接点

「当社は年間○万立方メートルの地下水を使用しています」

数字だけでは、利用が持続可能かどうかは判断できません。同じ年間10万立方メートルの採取でも、地下水が十分に涵養される地域と、水収支が逼迫している地域とでは意味が変わります。

ウォータースチュワードシップの議論では、AWS基準をはじめ、サイト単独ではなく集水域の文脈で水利用を捉える枠組みが取られてきました。需給の逼迫が懸念される地域について、行政側でも地下水を地域全体の収支から管理する方向が示されたことになります。

使用量という絶対値の報告にとどまるのか、地域の涵養量に対する位置づけまで説明するのか。自社の水開示は、どちらの言葉で書かれているでしょうか。

 

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今週もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、来週のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子


  • 【主な情報源】
    地下水の適正な保全と利用に関する検討会「地下水の適正な保全と利用のあり方について(提言)」(2026年8月)
  • 国土交通省報道発表「「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」提言がとりまとめられました」(2026年8月4日)
  • 国土交通省「条例に基づく地下水規制の現状分析について」(第2回検討会資料、2026年4月23日)
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