熊本地震で亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。また、被害を受けた地域や商業施設、店舗で、事業と暮らしの復旧に尽力されている皆様に、深い敬意を表します。
今回の地震では、イオンモール熊本から一度避難した後、館内に戻った従業員が爆発事故に巻き込まれ、亡くなったことが報じられています。
オンワードホールディングスは、従業員が携帯電話や家の鍵などを取りに戻ったことを受け、勤務中の貴重品の常時携行を義務付けました。避難後に再び館内へ入る必要をなくすという意味で、具体的で実行可能な対策です。
ただし、今回の事故から企業が確認すべきことは、持ち物の管理だけではないように思います。
別のテナントでは、売上金を金庫に移すため、会社側が従業員に館内へ戻るよう指示していたことも報じられました。
商業施設や店舗では、売上金を管理する、店舗を施錠する、商品や設備を保全するといったルールが日常的に運用されています。これらは平時には欠かせないものです。
しかし、大規模な地震や火災などが発生した場合には、そのルールを継続することが、避難の遅れや再入館につながる可能性があります。
「人命を最優先する」と定めるだけでは、現場での判断が難しい場合もあります。平時には厳守を求められている業務を、非常時にはどこまで省略してよいのかが明確でなければ、従業員や店舗責任者は迷います。
必要なのは、非常時に新たなルールを加えることだけではなく、平時のどのルールを停止するのかを、あらかじめ決めておくことではないでしょうか。
例えば災害時には、売上金や商品をそのままにして避難してよいこと、施錠や閉店作業を完了させなくてよいこと、上司への報告より避難を優先することなどを、具体的に示す必要があります。
一度避難した後の再入館についても、従業員の自己判断に委ねるのではなく、誰が、どのような安全確認に基づいて判断するのかを明確にしておくことが重要です。管理職や本部を含め、財産保全を目的とした再入館を指示できない仕組みも求められます。
貴重品の携行は、再入館を防ぐための有効な補助策です。一方で、鍵や財布を持たずに避難した従業員への帰宅支援など、持ち物を回収しなくても困らない体制もあわせて考える必要があります。
防災マニュアルには、避難時に「すべきこと」が数多く書かれています。
では、災害が起きた瞬間に「しなくてよいこと」や「してはならないこと」は、同じ程度に明確になっているでしょうか。
非常事態に直面すると、人は強い緊張や混乱のなかで、普段どおりに状況を判断することが難しくなります。その場で複数のルールを比較し、「今回はどれを優先すべきか」と冷静に考えることは、決して容易ではありません。だからこそ、平時から守っている業務ルールのうち、災害時には何を中断してよいのか、何をしてはならないのかを、あらかじめ具体的に示しておく必要があります。
たとえば、
売上金や商品を残して避難してよい。
施錠や閉店作業を完了させなくてよい。
上司への報告を待たずに避難してよい。
一度避難した後は、財産や私物の回収を理由に戻ってはならない。
こうした原則をマニュアルに記載するだけでなく、研修や朝礼、避難訓練などを通じて繰り返し伝えておくことが重要です。
非常時に思い出せるのは、その場で初めて読んだルールではなく、平時から何度も確認し、行動として身につけてきた原則です。「人命を最優先する」という方針を現場で実行可能にするには、何をするかだけでなく、何をやめるのかまで、明確に共有しておく必要があると考えております。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。