EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)は7月1日、「State of Play 2026」を公表しました。第三者保証を受けた2025年度のESRS準拠サステナビリティ・ステートメント905社分を、18の設問で分析したものです。
(ご参考)
EFRAG State of Play 2026 Report Now Available(2026年7月1日)
調査結果から見えてくるのは、ESRS開示が2年目の「継続と改善」の段階に入る一方で、重要と判断したトピックを、測定可能な目標や経営者の評価へ接続する余地が残っていることです。
候変動(E1)と自社従業員(S1)は、それぞれ99%の企業が重要と判断し、事業行動(G1)も95%に達しました。82%の企業が前年度からダブル・マテリアリティ評価を更新していますが、重要トピックの全体像に大きな変化はありません。
EFRAGは、2年目の特徴を「変革ではなく、継続と改善」と整理しています。初年度に評価と開示の枠組みをつくり、2年目はその精度を上げる段階に入ったと読めます。
サステナビリティ・ステートメントの平均ページ数は、各年度の全サンプルを比べると115ページから95ページに減少しました。ただし、両年度に含まれる同一企業554社で比べると、108ページから103ページへの減少です。企業のESRSへの習熟による開示の合理化に加え、対象企業の国別構成や報告書の収集期限も結果に影響しています。したがって、単純に「20ページ短くなった」と評価することはできません。
今回、特に注目したいのは、10のESRSトピックのうち重要と判断されたものが1社平均6.4であるのに対し、測定可能で期限のある目標が設定されていたのは平均3.3トピックだったことです。平均値でみると、重要とされたトピックの約半数では、こうした目標が確認されませんでした。
また、この設問の分析対象となった827社のうち、サステナビリティ目標を経営者のインセンティブ制度や報酬に組み込んでいると開示した企業は63%でした。残る37%については、開示上、サステナビリティ・パフォーマンスと経営者報酬との正式な接続が確認されませんでした。
マテリアリティ評価によって課題を選び、報告書に記載することと、その課題を実際に動かすことは同じではありません。目標や期限を置き、担当部門や経営層の責任、評価制度との関係を明確にすることで、重要課題を経営管理へ組み込む道筋が見えやすくなります。
日本企業にとっても、今回の結果はESRS対象企業だけの話ではありません。
次に確認したいのは、重要とした各課題について、測定可能な目標があるか、取締役会が進捗を監督しているか、事業部門や経営者の評価に反映されているかです。
ESRSの簡素化が議論されるなか、開示項目の数や文章量に関心が集まりがちです。しかし、要求事項が整理されることと、重要課題を経営として管理する必要性が薄れることは同じではありません。EFRAGも今回の調査を、簡素化をめぐる議論に実態データを提供するものと位置づけています。
ESRS開示の成熟度は、報告書が何ページになったかよりも、重要と判断した課題に目標と責任を置けたかで見る段階に入っています。
注: なお、本調査は生成AIを用いて905社の報告書を分析し、全体の5%に当たる代表サンプルを手作業で検証したものです。EFRAGは、個別の数値について残存する分析誤差の可能性を示し、市場全体の傾向として解釈するよう留意を求めています。(レポート8.2 Methodologyより)
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今週もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、来週のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。