独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年7月16日に公表した「DX動向2026」の概要によると、回答企業の75.7%が何らかの形でDXに取り組み、AIを「導入している」企業も42.3%に達しました。試験利用を含めれば58.0%です。
数字だけを見れば、DXとAIは企業活動の中にかなり入り込んできたように見えます。
ただし、今回の調査で目を引くのは、導入率の高さよりも、成果の偏りです。
AI導入による具体的効果を尋ねた設問では、回答企業853社の91.6%が「業務が効率化したり迅速化した」を挙げました。AIの利用用途を見ると、文書の要約や翻訳、レポート作成、情報検索、アイデア出しなど、日常業務を支援する用途の回答割合が高くなっています。
一方、「新製品・サービスの開発・提供」は7.4%、「顧客満足度の向上」は4.5%、「売上・利益の向上」は3.9%でした。
もちろん、業務効率化は軽い成果ではありません。作業時間を短縮し、従業員の負担軽減につなげることには大きな意味があります。
問題は、説明がそこで終わってしまうことです。
筆者が統合報告書を読むなかでも、生成AIの利用環境や研修人数、利用者数を示す記述を目にするようになりました。これらは重要な取組実績ですが、それだけでは、AIが企業価値をどう変えたのかまでは見えてきません。
AI活用を企業価値の説明につなげるには、導入後に起きた変化まで示す必要があります。
たとえば、問い合わせ対応に生成AIを導入したのであれば、対応時間はどれだけ短くなったのか。回答品質はどう変わったのか。生まれた時間を、従業員は顧客対応や企画業務に振り向けられたのか。顧客満足度や継続率に変化はあったのか。
すべてを直ちに売上や利益へ換算する必要はありません。導入初期であれば、「現在は業務時間の削減まで確認しており、次に顧客体験への影響を検証する」と書くだけでも、単なる導入実績とは違います。
大切なのは、AI・データへの投資、業務や意思決定の変化、顧客や従業員への価値、財務やリスクへの影響を、一つの経路として説明することです。
今回の調査では、「DXを推進する人材」の量が「やや不足している」「大幅に不足している」とする企業が合計85.5%に上りました。
AI関連人材については、「現場の知見と基礎的なAI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員」や、「データマネジメントの知見があり、社内で企画・推進できる人材」の不足感が高いままでした。
単にAIツールを使える人だけでなく、現場の課題とAI・データを結びつけ、社内で実装を進める人材が課題になっていると読み取れます。
AI導入が業務効率化から始まること自体は、問題ではありません。問われるのは、その先です。
短縮された時間を何に振り向けたのか。意思決定や顧客体験はどう変わったのか。人材はどのような役割を担うようになったのか。
今回の調査結果を統合報告書に引きつけて考えるなら、求められるのは、「AIを導入した」という一文から、企業価値が生まれるまでの経路を書くことではないでしょうか。
※本稿は、IPAが2026年7月16日に公表した「DX動向2026のポイント」をもとに作成しています。図表ごとに回答母数は異なります。また、調査結果は企業の経営層、情報システム部門、DX推進部門等による回答に基づくものです。詳細な報告書とデータ集は、同資料の公表時点では2026年7月下旬に公開予定とされています。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。