2026年7月14~15日、熊本市で第2回「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026」の本会合が開催され、15日に「熊本宣言」を採択して閉幕しました。宣言が示したのは、ネイチャーポジティブを理念や開示にとどめず、測定可能な企業行動へ移すという方向性です。
熊本宣言には85団体が賛同し、うち民間企業は41社でした。サミットには2,725人が参加し、登録者の約3分の2を企業・金融機関が占めています。
宣言は、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復へ転じる「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の実現に向け、社会全体で行動を加速する必要性を強調しました。特に、2026年10月にアルメニアで開催される生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)を、進捗を確認し、実行を強める重要な節目と位置付けています。
日本は、TNFD提言に沿った開示を開始すると表明した「TNFDアダプター」の数で世界最多となっています。熊本宣言は、その次に問われるものが「開示したか」ではなく、「自然の状態をどう変えるか」であることを示したといえます。
企業実務でまず注目したいのが、ミティゲーション・ヒエラルキーです。宣言は企業に対し、生態系への悪影響を第一に回避し、次に最小化し、そのうえで劣化した陸域・海域の回復や再生に貢献するよう求めました。回避できない影響の補償は、最後の手段です。
植林や自然共生サイトへの参加など、自然に良い活動を増やすだけでは十分ではありません。企業実務に置き換えれば、事業拠点、原材料調達、土地利用、製品のライフサイクルなどが自然に与える負の影響を把握し、事業の意思決定を通じて減らすことが先に置かれます。
さらに宣言は、自然への影響・依存と「自然の状態」を測る、科学的かつ実務に使える指標の整備を提言しました。評価、目標設定、移行計画、企業報告を国際的に整合させることも盛り込んでいます。熊本宣言は、開示に加えて、評価、目標設定、移行計画までを一体的に整合させる方向性を示しています。
熊本宣言は、自然資本を企業と社会に不可欠な資産と位置付け、ネイチャーポジティブへの移行を、持続的成長、レジリエンス、イノベーション、長期的価値創造につながる投資機会と捉えました。
これは、自然関連の対応をサステナビリティ部門だけの活動にしないということでもあります。企業側の実務としては、自然資本への対応を、調達、設備投資、研究開発、商品設計、事業ポートフォリオ、リスク管理へどう組み込むかが問われます。循環型経済や脱炭素、水・食料安全保障との統合も必要です。
担当者様にとっては、①負の影響を優先して把握しているか、②活動量ではなく自然の状態や成果を測る指標があるか、③目標が経営計画や資本配分に接続しているか、の3点が当面の確認事項になります。
熊本宣言は、ネイチャーポジティブが「賛同と開示」の段階から、「測定と実装」の段階へ入ったことを告げています。
ーーー
今週もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次週のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。