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HINTサステナ情報のヒント

雨庭は、花壇ではない——「グリーンインフラ」が店頭に並ぶ時代の基礎知識

勉強用(初学者様向け)

豪雨と酷暑のニュースが続くなかで、ホームセンターの店頭やウェブサイトで「雨庭(あめにわ)」という言葉を見かける機会が増えました。

屋根や舗装面に降った雨を植栽帯で受け止め、ゆっくり地中に浸透させる庭のことです。名前はやわらかく、植物を育てながら雨を土に返すという発想には、確かに惹かれるものがあります。

 

ただ、サステナビリティに関わる立場からは、雨庭を「花を植えるスペース」としてだけ理解すると、少し足りません。雨庭はグリーンインフラの代表的な手法のひとつであり、機能としては、雨水を一時的に受け止め、貯め、地中に浸み込ませる小さな土木施設だからです。

 

雨庭が担う機能——涵養・氾濫抑制・暑熱・生きもの

都市の地表はアスファルトやコンクリートに覆われた面が多く、降った雨は地中に浸み込まないまま、短時間で下水道や河川に流れ込みます。雨庭は、雨をすぐ流すのではなく、いったん受け止めて土に戻すことで、下水道に一気に集まる流れをやわらげます。

働きは地下水の涵養だけではありません。
豪雨時に道路や住宅地へ水があふれる内水氾濫のリスクを和らげ、植物の蒸散は夏の暑熱をやわらげ、昆虫や鳥の居場所も増やします。

雨庭は多面的な価値を持つインフラとして位置づけられています。東京都も豪雨対策の一環としてグリーンインフラの活用を掲げ、公共施設への設置を進めていると報じられています。

要するに雨庭とはかわいい花壇ではなく、雨をどこで受け、どれだけ地中に入れ、あふれた分をどこへ逃がすかを扱う、都市の水の装置なのです。

 

「基本的に全てのお庭で」という打ち出し

雨庭を広く知ってもらう動きは、すでに民間にも広がっています。
ホームセンター大手のカインズは、東京都や世田谷トラストまちづくりと連携して店舗にモデル施設を設け、専用ウェブサイトで作り方を紹介しています。

生活者に雨庭を身近に感じてもらう、意味のある普及活動です。
一方で、打ち出し方は少し気になります。

公式ページのFAQは「基本的に全てのお庭で実施できます」とし、面積は3平方メートルほどから、5〜10平方メートル程度のシンプルな雨庭ならDIYでも十分に作れると説明します。
手順は、深さ30センチほどの穴を掘り、透水シートを敷き、砂利や土を入れる。
必要な資材はホームセンターでそろう、と続きます。コンクリートで完全に覆われた庭には外構工事が必要、といった但し書きも添えられています。

丁寧な説明ではありますが…「全ての庭で」「DIYで十分」「資材はそろう」という言葉が前に出ると、雨庭は週末に作れる防災ガーデニングとして受け取られやすくなる点には、注意が必要です。

 

地面の側にある条件——土質・地下水位・離隔

雨庭は雨水を地中に入れる施設です。
浸透するかどうかを左右するのは、植物の種類ではなく地面の側の条件です。

 

たとえば横浜市は、雨水浸透施設を設けてよい場所かどうかを、地形・土質・地下水位という要素で判断するしくみを定めています。

浸透しにくい土質(固く締まったシルトなど)や、地下水位が地盤面から2メートルより浅い場所は、浸透能力を発揮しにくい土地として整理されています。建物や擁壁と十分な離隔がとれない場所も、設置できません。助成の条件では、建物と施設外側の離隔は30センチ以上とされています。

 

都市部の敷地には、見た目は植栽帯でも、下に十分な土の層がない場所があります。
地下駐車場や地下躯体の上に薄く土を載せた人工地盤、造成時に固く締め固められた庭、古い舗装やガラが残ったままの土。表面だけを見て「土がある」と判断すると、雨は思ったほど浸み込みません。

 

雨を地中に戻すということは、目に見えないところで水を動かすということでもあります。
うまく浸透しなければ水たまりになり、流れ方によっては隣地や建物に届きます。

 

雨庭を暮らしに近づける動きは、豪雨と酷暑を背景に、行政からも民間からも広がっています。
雨庭が「作れる庭」になるかどうかを左右するのは、植えたい植物ではなく足もとの地面です。

 

店頭やウェブで「全ての庭で」という言葉に出会ったとき、表面の土だけでなく足もとの下に何があるかを思い浮かべられる。雨庭を知るということは、まず足もとを知ることでもあります。

 

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本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それではまた、次回のブログで。

 

執筆担当:川上 佳子

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