昨年夏の本ブログで、私は「平等と公平は違う」と書きました。
(ご参考記事)
見えにくい不平等こそがサステナビリティを考える出発点に──「水の日」に考えるトイレの行列問題とSDGsゴール6
本日は、その続きを書きたいと思います。
国土交通省は6月12日、「トイレの便器数に係る基準と適用のあり方に関するガイドライン」を決定しました。
(ご参考記事)
日経電子版『トイレ待ち時間「平等に」 女性用、男性用以上と国交省指針』
そこには、「利用者が男女ほぼ同数の施設では、女性用便器数を男性用(大小合計)以上とする」とありました。
注目したいのは、今回、議論の座標が「面積や便器数」から「待ち時間」へ動いたことです。
何を配ったかではなく、結果としてどれだけ待つか。
測る対象が、入力から結果へ移りました。
これは確かな前進だと思います。
ご参考:
駅で0.63、空港で0.66──男性用を1としたときの女性用の比は、多くの施設で1を下回っていました。同じ面積を配っても、同じだけ使えてはいなかった。
行列への不満は、駅で女性の55%、男性の35%にのぼります。
とはいえ、指針は最後まで「待ち時間が平等になるように」と言います。
公平(Equity)ではなく、平等(Equality)の語のままです。
座標を入力から結果へ動かしても、軸そのものは「男女」という二元のまま据え置かれています。
その軸の外側に、座標を持たない人たちがいます。
たとえば、車椅子の利用者、子ども連れ、介助の必要な人、性的マイノリティ。
男性用でも回転の悪い個室には行列ができます。
「待ち時間」という一本の物差しは見やすいですが、見やすい物差しは、その上に乗らないものを視界から外します。
この構図は、サステナビリティ開示にそのまま重なるように思います。
人的資本でもDEIでも、私たちは「設置した」では足りず「使えているか」を測りたい。だからアウトカム指標(proxy)を置きます。待ち時間も、そのproxyの一つです。
しかしproxyは、置いた瞬間に目的化しやすい。待ち時間を縮めること自体が目的になれば、待ち時間に乗らない不便は数えられなくなります。
女性管理職比率でも同じです。比率を上げることが目的化すれば、登用の質や定着は座標の外へ落ちます。何を測るかが、何を是正するかを──そして何を見落とすかを──決めてしまう。
昨年のブログに私は「見えにくい不平等こそが出発点」と書きました。
今回の私の問いは、その一歩先にあります。
測った瞬間に座標の外へ落ちていくものを、それでも見張り続けられるか。
今回の指針が示したのは到達点ではなく、もう一段深い問いの入り口だと、私は読んでいます。
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今回もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。