TNFDとAccounting for Sustainability(A4S)が、CFO向けのガイド「Asking Better Questions on Nature」を公表しました。
Asking Better Questions on Nature For Chief Financial Officers
自然関連リスクをどう財務に組み込むかを、CFOが自部門や経営に問うべき11の問いとして整理したものです。気候変動対応でTCFD対応の経験を積んだCFOたちが次に向き合う論点として、自然が財務の場に上がり始めていることを示す動きのひとつです。
ガイドで目を引くのは問いの内容ではなく、問いが向けられている先です。
リスクの優先順位付け、資本配分、設備投資の判断基準、資金調達コスト、予算編成、業績連動報酬——ガイドが問いを向ける先は、サステナビリティ部門ではなく財務・経営・IR・調達・人事の各機能です。自然は環境コンプライアンスの報告項目から、財務計画の入力変数へと位置を移しつつあります。
ガイドはまた、取締役会で自然関連リスクを検討することを取締役の善管注意義務の一部として、CFOら経営者が負う受託者責任に連なる論点として位置づけています。
ガイドは予算編成への自然の組み込み方として、リングフェンス、配分、非貨幣単位の資本予算、内部価格(水使用への課金やシャドープライス)を並べています。
自然の防災機能——無傷の氾濫原や自然の洪水防御——に守られた資産は、防御が劣化した同等の資産より強靭で価値が高くなりうる、という資産評価・減損上の論点も挙げられています。
Naturaは人的・社会・自然資本の影響を貨幣換算する統合損益を開発し、GSKは2025年データに基づくTNFD開示を2026年から始めるとしています。
自然をめぐる数値が、サステナビリティ報告書の中だけでなく、設備投資の稟議や信用評価の場に現れ始めています。
開示の側では、ISSBが2026年4月、自然関連開示を独立基準ではなくIFRS実務記述書の形で提案する方針を決めました。公開草案は2026年10月に市中協議向けに公表される見込みで、IFRS S1の下では重要性のある自然関連リスク・機会はすでに開示対象とされます。日本のSSBJ基準がISSBを土台とする以上、実務記述書という形式の選択は、国内の開示実務にも遅れて影響が及びます。一方で、気候と異なり自然には単一の標準指標が存在せず、データは事業と価値連鎖をまたいで分散し、第三者推計に依存しやすい状況です。TNFDは信頼できる自然状態データへのアクセスを改善するため、Nature Data Public Facilityの創設を提案しています。
ガイドはCFOに宛てて書かれています。
ただし11の問いが向かう先は、財務・リスク・IR・調達と複数に分かれます。
自然をめぐる論点は、サステナビリティ部門が報告する事柄なのか、全社の財務計画に組み込む事柄なのか。ガイドが促すのは、境界を引くことではなく、境界を越えて自然を財務に組み込むことです。
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今週もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、来週のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。