2026年4月28日、東京証券取引所は「2026年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」を公表しました。
本調査は、2026年3月期の東証内国上場会社2,168社を対象に、定時株主総会の開催予定日や、株主総会資料の電子提供、英文招集通知、議決権電子行使、バーチャル総会の実施状況などを調査したものです。回答社数は1,659社で、全市場の77%、プライム市場では876社・81%が回答しています。
株主総会というと、「いつ開催されるか」「どのような議案が出るか」に目が向きがちです。
しかし今回の資料からは、株主総会が、単なる年次イベントではなく、株主が情報にアクセスし、議決権を行使しやすくするための場として、少しずつ変わっていることが見えてきます。
本稿では、注目ポイントを3つに絞って確認します。
まず注目したいのは、定時株主総会の開催日の集中です。
東証資料によると、2026年の定時株主総会は、6月26日(金)に31.0%が集中する見込みです。前年の最集中日集中率は24.2%であり、2026年は前年より集中度が高まっています。
(資料のp4掲載グラフ「最集中日における集中率の推移」をご参照ください)
長期的に見れば、1980年代から1990年代にかけてのような極端な総会集中は大きく緩和されてきました。
一方で、足元では「分散がさらに進み続けている」とは言い切れません。2026年は、最集中日の集中率が前年より上昇しています。
電子提供や電子行使の環境が整っても、開催日そのものが特定日に集中すれば、複数社の株式を保有する投資家にとっては、情報確認や議決権行使の負荷が高まりやすくなります。
株主総会の「参加しやすさ」は、デジタル化だけで決まるわけではありません。開催日の分散も、引き続き重要な論点です。
次に注目したいのは、株主宛発送書類の変化です。
全社では、「アクセス通知のみ」が8.6%、「アクセス通知とサマリー資料」が44.0%、「フルセット・デリバリー」が47.4%となる見込みです。
特にプライム市場では、「アクセス通知のみ」と「アクセス通知とサマリー資料」の合計が70.9%となり、前年から6.1ポイント増加しています。
(資料のp6掲載グラフ「株主宛発送書類提供の状況」をご参照ください)
この変化は、単なる紙の削減ではありません。
電子提供制度のもとでは、株主がウェブ上の資料にアクセスすることを前提に、会社は「紙で何を届けるのか」「サマリー資料で何を伝えるのか」「詳細資料へどう誘導するのか」を考える必要があります。
つまり、株主総会資料は、ただ送付するものから、株主に使ってもらうものへと変わりつつあります。
これは、IRやサステナビリティ開示にも通じる変化です。情報を出すだけでなく、読み手が必要な情報にたどり着きやすいように設計することが、ますます重要になっています。
海外投資家や機関投資家への対応という点では、英文招集通知と議決権電子行使の状況も見逃せません。
プライム市場では、招集通知本文および株主総会参考書類の英訳を提供予定の会社が97.3%に達しています。また、機関投資家向けの議決権電子行使プラットフォームの利用率は97.7%、個人投資家向けのインターネット行使は99.4%となっています。
(資料のp7「英文招集通知の提供状況」、p8「議決権の電子行使の状況」をご参照ください)
プライム市場では、英文招集通知や電子行使は、すでに標準的な実務になりつつあるといえます。
ただし、英文対応については、もう一段深く見る必要があります。
同じプライム市場でも、事業報告および計算書類を含む招集通知すべての英訳を提供予定の会社は30.7%にとどまっています。
つまり、今後の論点は「英文招集通知を出しているか」だけではありません。
どの範囲まで英訳しているか。日本語版と同じタイミングで提供できているか。海外投資家が議案判断に必要な情報へ、十分にアクセスできるか。
英文開示は、形式的な対応から、実質的な情報アクセスの確保へと、少しずつ論点が移っていきそうです。
今回の東証資料からは、株主総会実務の現在地が見えてきます。
開催日の集中は、なお課題として残っています。
一方で、株主総会資料の電子提供、アクセス通知・サマリー資料、英文招集通知、議決権電子行使は、着実に広がっています。
ここで大切なのは、これらを単なる制度対応として見ないことではないでしょうか。
株主に、いつ情報を届けるのか。
紙で何を届け、電子で何を見てもらうのか。
海外投資家に、どこまで同じ情報を提供するのか。
議決権を行使しやすい環境をどう整えるのか。
これらはいずれも、株主との接点をどう設計するかという問題です。
株主総会は、年に一度の法定イベントであると同時に、企業が株主に対して、自社の説明姿勢を示す重要な機会でもあります。
「開催する」だけでなく、株主が参加しやすく、判断しやすく、行使しやすい場にしていくこと。
今回の東証資料は、その現在地を確認するうえで、実務者にとって参考になる資料といえそうです。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。