環境省は2026年4月、グリーンファイナンスに関連する2つの重要な公表を行いました。
1つ目は、4月17日に公表された「グリーンリスト」の改訂です。
2つ目は、4月27日に意見募集が開始された「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン」「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」の改訂案です。
いずれもグリーンファイナンスに関するものですが、役割は少し異なります。
大きく整理すると、以下のようになります。
4月17日に環境省が公表したのは、グリーンファイナンスの対象となるプロジェクトを例示する「グリーンリスト」の改訂です。
グリーンリストは、グリーンボンドやグリーンローンなどで調達した資金の使途となるグリーンプロジェクトについて、具体例を示すものです。環境省は、ICMAのグリーンボンド原則に示される資金使途の例示を踏まえ、日本国内で想定されるプロジェクトを整理しています。
今回の改訂では、たとえば以下のような点が見直されています。
- ネガティブな環境効果に関する記載の拡充
- 小分類名の見直し
- 注記の整理
- 関係法令の遵守や地域共生への配慮の明記
ここで重要なのは、グリーンリストが「これに該当すれば自動的にグリーンである」と認定するものではなく、あくまでグリーンプロジェクトとして整理され得るものの例示である点です。
環境省も、環境改善効果についてはまず資金調達者が評価し、最終的には市場において評価されるものと位置づけています。
つまり、グリーンリストは便利な参照資料である一方、リスト該当性だけで説明が完結するものではありません。実際には、そのプロジェクトがどのような環境改善効果をもたらすのか、またネガティブな影響への対応がどうなっているのかを、資金調達者が説明する必要があります。
続いて4月27日、環境省はグリーンボンド、サステナビリティ・リンク・ボンド、グリーンローン、サステナビリティ・リンク・ローンに関するガイドライン改訂案について、意見募集を開始しました。
意見募集期間は、2026年4月27日から5月29日までです。
今回の改訂案は、ICMAやLMA等の国際原則の改訂を踏まえたものです。環境省によれば、国際原則等に準拠している部分と、国内向けに解説を行っている部分を分けて整理したうえで、定義の明確化や解説の見直しを行っています。
また、今回の改訂案では、グリーンイネーブリングプロジェクトに関する記載・解説も追加されています。
グリーンイネーブリングプロジェクトとは、簡単にいえば、グリーンプロジェクトそのものではないものの、グリーンな活動を可能にしたり、支えたりするプロジェクトを指します。たとえば、再生可能エネルギー設備そのものではなく、その導入や普及を支える技術・部材・インフラなどが論点になり得ます。
この領域は、グリーンファイナンスの対象を広げる可能性がある一方で、「何をもってグリーンに貢献していると説明するのか」が重要になります。
グリーンリストは「何を対象にできるか」を示す資料であり、ガイドラインは「対象としたものをどう説明するか」を示す資料です。
そのため、両者は別々の資料でありながら、実務上は密接に関係します。
企業がグリーンボンドやグリーンローンを活用する際には、まず資金使途となるプロジェクトがグリーンリスト上のどの項目に該当し得るかを確認することになります。
しかし、それだけでは十分ではありません。
そのプロジェクトによって、どのような環境改善効果が見込まれるのか。
ネガティブな環境影響はないのか。
地域との共生や関係法令への対応はどうなっているのか。
外部レビューでは何が確認され、何が確認対象外なのか。
こうした点を説明する際に、ガイドラインの考え方が重要になります。
環境省が4月に相次いで公表したグリーンリスト改訂とガイドライン改訂案は、グリーンファイナンスの実務を考えるうえで、セットで確認しておきたい内容です。
グリーンリストは、資金使途となるプロジェクトの候補を確認するための資料です。
一方、ガイドラインは、そのプロジェクトをどのように説明し、管理し、開示するかを考えるための資料です。
今後、企業がグリーンボンドやグリーンローン、サステナビリティ・リンク・ボンド/ローンを活用する際には、リスト該当性だけでなく、環境改善効果、ネガティブ影響、地域共生、KPI・SPTとの関係、外部レビューの範囲などを含めた説明がより重要になると考えられます。
特に、グリーンイネーブリングプロジェクトのように、グリーンな活動を「支える」領域については、どのような貢献経路で環境改善効果につながるのかを明確にすることが、投資家・金融機関・その他ステークホルダーの理解につながります。
今回のガイドライン改訂案については、2026年5月29日まで意見募集が行われています。グリーンファイナンスに関わる企業、金融機関、開示実務者は、グリーンリスト改訂とあわせて確認しておきたい内容です。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。