2026年4月1日(現地時間同日)、日本政府は国際労働機関(ILO)の「職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約」(第155号条約)の批准書をスイス・ジュネーブで寄託しました。
4月3日に官報で公布され、2027年4月1日に日本について発効する予定です。
ILOの発表によれば、日本はこの条約の92番目の批准国となりました。主要7か国(G7)で批准していたのは、これまでイタリアのみで、日本は2か国目になります。
本条約は、業務に関連した事故や健康被害の防止を目的に、締約国に対して労働安全衛生・作業環境に関する一貫した政策の策定、実施、定期的な見直しを求めるものです。
国の段階の措置に加え、企業の段階で講ずべき対応にも触れています。使用者には、合理的に実行可能な範囲で、管理下にある職場・機械・設備・工程の安全確保が求められるほか、複数企業が同一職場で作業する場合の協力、労働者代表との連携などが盛り込まれています。
なお、条約は国内法・政策を通じて反映されるものであり、批准そのものが企業に新たな義務を直接課すわけではありません。
第155号条約は、2022年の第110回ILO総会において、第187号条約(職業上の安全及び健康促進枠組条約)とともにILOの「基本条約」に追加されました。それまで8つだった基本条約は、これにより10条約となっています。
日本は第187号条約はすでに批准済みで、今回の第155号条約批准により、未批准の基本条約は「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」(第111号)のみとなりました。
今回の批准は、国内法改正と時期的に重なっています。
2025年5月に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)は、2026年1月から段階的に施行されています。
主な改正項目は以下のとおりです。
いずれも、自社従業員に限定されない安全衛生管理という方向を向いています。ILO第155号条約の批准と、安衛法改正による国内ルールの拡張が、ほぼ同じタイミングで進んでいる構図です。
条約と国内法改正が並走していることを踏まえると、労働安全衛生の保護対象は、自社従業員から「同じ作業場所で働く人」へと広がりつつある、という見方も成り立ちそうです。2027年4月の発効に向けて、こうした座標の動きを開示実務の地図に置いておくことには、意味があるかもしれません。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、来週のブログで。
執筆担当:川上 佳子
【参考】
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。