2026年4月28日、東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請のアップデートを公表しました。
2023年3月の当初要請から3年、4年目に入るタイミングでの更新です。プライム約9割、スタンダード約5割が開示済みという状況が背景となっています。
並行して、4月10日には金融庁からコーポレートガバナンス・コード改訂案が公表され、現在パブリックコメント期間中です。二週間ちがいで出てきた2つの文書には、共通して使われている用語や論点が多くみられます。
以下、重なりが特に明確な4つの論点を並べます。
CGコード改訂原則4-1は、取締役会の役割として「成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて説明を行う」ことを求めています。
4/28アップデートも、「中長期的な経営方針(目指す姿や成長の道筋)」と「資本の使い方(配分や優先順位)」が明確に示されているかを問うています。
両文書には、「成長投資」「事業ポートフォリオ」「経営資源の配分」「優先順位」といった語が並びます。
CGコード改訂案の解釈指針には、取締役会が「現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資等に有効活用できているか」を不断に検証すべきとの文言が加わりました。
4/28アップデートも、「保有する資産について、価値創出のため最適な状態となっているか」「過剰な現預金を抱えていないか」と踏み込みます。
なお、参考データとして、自己資本水準について企業の60%が「適正水準」と認識する一方、投資家の71%が「余裕のある水準」と認識している、という数字が4/28文書に示されています。
CGコード改訂案では、基本原則2の解釈指針で「人的資本への投資等」がステークホルダーとの協働の具体例として明記されました。さらに改訂原則4-1の解釈指針では、取締役会が検討すべき投資対象として「人的資本・知的財産等の無形資産への投資」が例示されています。
4/28アップデートも、「バランスシートにあらわれない人的資本や知的財産などの無形資産が価値創出・強みの源泉であり、企業価値評価における重要性が増している」と記しています。
両文書に新たに登場した概念です。CGコード改訂案の解釈指針には、社外取締役の機能発揮をサポートし会議の運営を能動的に行うハブ組織として「取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)」の役割・機能が明記されました。
4/28アップデートも、「取締役会事務局の機能強化も重要」とし、「適切なアジェンダ設定」「社外取締役へ会社の情報を適確に提供できるよう社内との連絡・調整にあたる役割」と記しています。
「コーポレートセクレタリー」は、米英で確立された専門職の名称で、取締役会の運営、取締役の研修、投資家との関係維持、執行と社外取締役の橋渡しといったガバナンス関連機能を一元的に担う役割を指します。
二週間ちがいで届いた2つの文書を、重なりが明確な4つの論点で並べてみました。
連休明けに向けて、それぞれの文書がどこで何を扱っているかの見取り図として、お役立ていただければ幸いです。
なお、CGコード改訂案にはこの4点のほかにも独自の論点があります。
今回はあえて「重なり」だけを抜き出していますので、コード固有の整理は改訂案の本文をご参照ください。
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本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた、次回のブログで。
執筆担当:川上 佳子
本稿は2026年4月10日公表のコーポレートガバナンス・コード改訂案、および4月28日公表の「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請アップデートに基づきます。改訂案の最終版および施行内容は今後変更の可能性があります。
代表取締役 福島 隆史
公認会計士。2008年、SusTBを設立。企業の自主的かつ健全な情報開示をサポート。
川上 佳子
中小企業診断士。銀行、シンクタンク勤務を経て2002年より上場企業の情報開示を支援。